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[コメント] 風と共に去りぬ(1939/米)

BLMで南軍旗は粛清され、ジョン・ウェイン空港は改称を迫られ、本作のネット公開は注釈付きになった。アメリカの自浄能力は優れている。羨ましいことである。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭「大いなる文化は風と共に去ったのである」という回顧は面妖であり、トランプ的な回帰を煽る婉曲表現なんだろう。ここでいう文化とはすぐ後で「奴隷制度を守り抜く」文化と云いなおされる。いったい、奴隷の幸福とはいったい何だろう。でかい時の鐘を黒人の子供が輪にすがって回すシルエットが美しく撮られる。記憶には美しい光景だろうが回している当人はしんどかろう。

そんなショットが繰り返されるなか、最悪の描写は、南北戦争終了後にカーペットバッガーと呼ばれた北部の悪徳政治家が南部に乗り込んでくる件で、丸々と太り着飾った黒人政治家なのだ。彼はハティ・マクダニエルらの白人への従順と見事に対照されている。映画は黒人に知性はいらないと端的に語っているのだ。愚かしい事態である。

物語はそれなりに面白い。破格の善人たちに囲まれたヒロインとヒーローだけが突飛で我儘、野戦病院の看護を放り出したり、税金対策に妹の彼氏を奪ったりヴィヴィアン・リー、しかし彼女もときどき善人になるときがある、という物語は宝塚の舞台と少女漫画に蔓延している手法。一回だけ愛していると云われたレスリー・ハワードを想い続けるヴィヴィアン。水野晴郎は本作を何度も観たそうだが、ああいう人物が大好きな作品なんだろう、よく判らないけど。

中盤に「たとえ盗みをし、人を殺しても、二度と飢えに泣きません」という誓いは、そのままラストで吐露される土地への執着に至る。いつまでも封建主義的な地主の心情吐露。なんでこんなものに付き合わされなければならないのか。このヒロインの云うことだからまた修正されるのかも知れないといういい加減さで終わるのが何とも言えない。

クラークの道化役はときどき面白い。戦争前に南部は「大砲工場もない。あるのは綿と奴隷と驕りだ」という揶揄は道化らしい。「好きでない相手と結婚する趣味があるのか」なんて揶揄がいい。しかし、終戦にあたり「軍隊が去ると最後の秩序もなくなる」という認識は物語進行用でいい加減だろう。

迫力ある撮影は例の南軍の戦傷者が寝転んだ駅舎のシーンの物量投入ぐらい。ダンスシーンは豪華なのは衣装だけで『戦争と平和』と比較にならないショボさ。まあ年代的に開きがありすぎるだろうが、撮影のために尊重されるほどのフィルムでもない。

(評価:★1)

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