[コメント] 土(1939/日)
畦道を逃走する男の背中を追うキャメラ。逆光の土手を行く提灯灯した荷車。すでに吐夢の重厚な詩情が完成している。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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明治の農村再現というだけなら後代にもいい美術はたくさんある訳だが、本作は先駆を云々するより、内田吐夢の作品として優れていると思われる。土間の切り取り方など素晴らしいものだ。
最後に小杉勇と山本嘉一の和解に至る収束が脱落しているとテロップで示される訳だが、それぐらいなら物語自体は元から大したものではない。そこで風見章子(「おしん」の小林綾子は彼女の隔世遺伝かと思わせられる)が活躍しただろうと思うと脱落は残念だけれど。
滋野辰彦氏がこう書いている。
「長塚節の時代には、この問題(小作農と地主の問題)はまだ農民に自覚されていなかったと言ってよいのだが、吐夢の「土」の時代では、それは一度国民の意識にのぼったあとで、今度は権力の側から禁止令が出ているのだった」
本作は地主の村田知栄子を情ある人と描いている。戦後には滅多にない切り口で、これら小作農に係る端々の描写が見処であるが、ここは原作では無作為、映画では作為、ということになるのだろう。東ドイツとソ連は封建主義のサンプルとして本作を保有していたのだろうなあ。ということで、脚本レベルで傑作とはいい難い。
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