コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 家族(1970/日)

全然ロード・ムービーらしくないロード・ムービー
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画、全然ロードムービーらしくない。何でだろうと考えてひとつ思いついたのは、善人な他人に出会うという件が殆どないこと。該当するのは私も子供を死なせてと泣く春川ますみと親切な動物園の饅頭売りの娘ぐらいで、あとは森川信もテレビで寅さん見て笑っているだけだし、ハナ肇渥美清も賑やかしにとどまる。旅の出会いの愉しみなど何もない。後年の山田映画と比べても異例だ。そして「家族」がポロポロ欠けてゆく。普通は再会が描かれるものなのに。

しかし、こういうフィクションで人を殺すのはひとりまで、ふたりはやり過ぎと思う。別に笠智衆を亡くす必然性がない。お泪頂戴に流れて白ける。これだけが残念。笠が孫と上野公園辺りをぶらぶら暇つぶしする件がいい。『東京物語』が想起される。暇つぶしだけで客を二度泣かせたのはこの名優だけだろう。駄目押しする必要は全然ないのに。

車窓マニアとして単純に面白い本作の日本列島串刺し描写を眺めての感想は、この列島の役割分担は当時から全然変わっていないのだなあ、というもの。八幡製鉄所も北海道の酪農も。大阪には万博の代わりにカジノが出来るんだろうし。万博が懐かしい。私の両親もあの混雑でへたばったのを思い出した。倍賞千恵子は多分本作が最高に魅力的、特に序盤の蓮っ葉な造形がいい。ベストショットは井川比佐志が自動車でムズがる息子を下ろして道端で立小便させる件。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)jollyjoker[*] ゑぎ[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。