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[コメント] 飛行士の妻(1980/仏)

ふたりが茶店を出て両側駐車の緩い石畳の坂道を登りながら延々喧嘩している件。公園で探偵していたら飛行士と連れ(妹と判明する)が半円を描いた舗道をこちらに向かって歩いてくる件。このふたつが抜群に素晴らしい。ルーズに見せた完璧な構図とアクション。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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本作は会話劇なのでとりわけここが目立つ。ロメールなら全編これで通せるだろうに、そうしないことこそがロメールの節操に見える。

不毛な青春もののうち男が主人公なのは珍しく、だからこそ身近に感じる。「あんなダサいのはなかなかいない」と陰口云われるフィリップ・マルローがとてもいい。ダサいが好青年。徹夜明けの彼は何度も居眠りをして目覚め、目覚める度に偶然に遭遇する。この呼吸が絶妙で、まるで夢の続きのようだ。マリー・リヴィエールを追いかけ、飛行士を尾行し、アンヌ・ロール・ムーリーを求める。アンヌも探偵と推理という愉しみを突然発見してハイになるのが愉しい。

結婚しても別居するのだという志向を語り、破格に長い二人芝居の末に「情けない」と泣くマリー・リヴィエールはなんと判り難い人物だろう。格言「人は何かを考えてしまう」はロメールらしく恋のことなんだろう。ラスト、アンヌ・ロール・ムーリーが好きになったのだと何も云わないのに判明するラストはまるで男性客との共犯関係をつくって壊したような時間の終わりだった。

観客へおさらいのようにそこまでの物語を会話で纏めて見せる箇所が二度あり、丁寧なものだと思った。16?撮影のブローアップとのこと。懐かしいシネセゾン配給。再見。

(評価:★5)

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