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[コメント] 源氏物語(1951/日)

一夫多妻制は忙しいなあという感想。大河内伝次郎の高僧は長谷川一夫の光源氏を「貴方こそ国を背負って立つお方」と持ちあげるが、お前、女通いしかしていないじゃないかと誰もがツッコミたくなるだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







興行年間一位らしいが、2時間で判る源氏物語という便利さからなんだろう。そこの処は私も勉強になった。物語は一夫多妻制の彼女が次々出てくるだけ。

皇后の藤壺(木暮実千代)を夜這いという名の強姦をしかけて産まれたのが自分に生き写しの子、及び、明石(京マチ子)の赤子の親は彼女の従者と思っていた堀雄二という処とは帝と藤壺の赤子と同じ、という処に、光源氏の巡る因果が捉えられたが、別になんということもない。このくらいで反省するなら一夫多妻制など常識としていないだろうと疑われる。

京マチ子と夜の舟に乗る件では、大河内の琵琶とピアノの劇伴が違うキーで衝突し続けるのだが、何だったのだろう。京の造形は中途半端、長谷川が暗殺者をやっつけた傷の血を舐めるショットは何だったのか。原作読んだら判る仕掛けなんだろうか。水戸光子の葵は地味、乙羽信子の紫は隠遁から連れ去られる酷い目にあっているのに、いつの間にかすっかりなついているのが後年のロマンポルノ的展開を想起させる無理矢理感。

谷崎潤一郎が監修しているらしいが、映画ならこんなもんだろうぐらいにしか思っていなかったのではないのだろうか。序盤に男たちの平凡論が長々と出てくるが、女は平凡が一番という下らない話で、原作そのままなんだろう。何も学ぶことはない。長谷川一夫の「あ、そう」連発は昭和天皇を想起させるが、よかったのだろうか。帝の顔を映さない(簾越しの影や後頭部で映される)のは当時の天皇撮影を規定したものだ。

悪役は好調で、いつもの進藤英太郎東山千栄子がペアになるのがすごい。逆光の築山に佇立して登場する奔放な朧月夜の長谷川裕見子が、色んな女のなかでは冴えていて愉しかった。

(評価:★3)

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