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[コメント] ええじゃないか(1981/日)

映画学校の校長が先導した邦画暗黒の80年代の典型作。退屈、退屈、退屈の極み。こんなんでええんですか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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だいたい、「ええじゃないか」について何の考察もないという看板の偽りが下らない。ただ60年代のアングラ演劇を何の閃きもなく縮小再生産しているだけだ。性愛についても、桃井だの倍賞だの池波だの脱ぐ気のない女優を使った10年遅れのロマンポルノの縮小再生産。何の意味があるのか。受け芝居しかできない泉谷しげるを使って何をしたかったのか。

昼は明る過ぎ、夜は暗過ぎるキャメラ。3億かけたセットはエージング不足で新品の映画のセットにしか見えない。これが当時の技術的限界では全然ないのは、冒頭の見世物屋敷の退屈さを『ツィゴイネルワイゼン』と比べれば簡単に判る。格子戸越しの対話シーンでは格子に人物が隠れて見えないという驚嘆のミスショットまである。やる気があるのか疑われる。

ともかく笑えない。この「軽喜劇」が今村の作風ではなく、欄干に縛られる桃井かおりほか何も面白くないのは、同情的に見れば資質に反した選択ミスだったのだろうが、致命的なことに彼がその後も類作を撮っているのを見ると何も自覚がなかったのだろう。二三の件を除いてお茶漬けサラサラな撮り流しに、彼の60年代の粘着質な充実感は雲散している。彼がしっかりしていれば80年代の邦画はもう少しなんとかなっていたはずなのに、という死んだ子の齢を数える愚痴を繰り返さざるを得ない。

本作で興味深いのは唯一、アメリカでは奴隷解放済みだと女郎身売りを非難する同時代性の認識。しかしここを「ええじゃないか」に敷衍する才覚が見事に欠落している。ここが本作の肝であったはずだろうに。何のためのアメリカ帰りの設定なのか。

昨今の非政党的なデモの盛り上がりは、江戸時代の「ええじゃないか」を想起させるものがある。この傍証になるかと思って観直した私が馬鹿だった。有為の映画人は、こんな凡作など無視して、現代的な「ええじゃないか」を撮ってほしいと強く願う。

(評価:★1)

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