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[コメント] 日本のいちばん長い日(1967/日)

倒れゆく陸軍を美的に捉えて不気味。途中からフィクションにして、クーデターが成功するのかと思った。例えば若松は『実録・連合赤軍』をこのように撮ることもできたが、当然ながらそうはしなかった。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







阿南大臣の自刃の真意については諸説あるところだが、映画は切腹に続いて赫々たる太陽を大写しにする訳で、ここからは、彼は死をもって陸軍を復活させるつもりだった、という説に加担している、と受け取るのが自然であろう。おぞましい解釈としか云いようがない。その他登場人物の立ち居振る舞いのいちいちが、カツドウヤ監督により美的に描写されるのもおぞましい。映画は巧ければいいというものではない。

最後、滑稽なことに地球儀を回しながら、大戦での日本人の死者300万人と物々しく語られるが、そこでアジアの死者2000万人は当然のように黙殺される。

本作は意図的に第三者の視点を欠落させ、組織内部の瓦解を閉鎖状況において表現する手法を採用している。この選択は誤っている。サリン事件の被害者を無視してオウム内部をフィクションとして描けば、悲劇の英雄麻原が登場し、教団員は正義の使徒として振る舞うだろう。ドラマとはそういうものだ。私はそんなものを観たいとは思わない。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)Orpheus ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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