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[コメント] 犯された白衣(1967/日)

「正常化バイアス」の典型例、リチャード・スペック事件から構想されたミソジニーのファシスト類型とポリアンナ症候群の最悪の遭遇。得るものはあるが血なまぐさくて何度も観たい映画ではない。夏純子は本作の収穫ですでに魅力全開。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







女たちが逃げないのは「正常化バイアス」とか「ポリアンナ症候群」とかの世界なんだろう。女たちは最初、圧倒的多数だし、同僚の窃視に連れ込んだ共犯の気分が続いているとも読める。「人間なら判るでしょ」という説得が最悪だろうが、冷静な説得などできるはずもない。一方、唐十郎の動機は判りやすい。笑われる女たちへの復讐というミソジニー。『胎児』の延長のファシスト類型で、やはり胎児の格好して膝枕。

66年シカゴのリチャード・スペック事件から構想されている。看護婦たちが順番にレイプされるのを待っていた異常心理の症例として取り上げられたものを読んだことがあった。この事件では少女ひとりだけが助かっている。映画では消え去る幻想になる。あたしウミホウヅキと歌う夏純子は何かすごくて、文学的な処で男女が出会ってメロウ。リアルな映画だが収束は観念的にしている。

ワンシーンワン−ンが異常にねっとりと描写されるのは時間配分もあるのだろうが、独特の味がある。それほどよく撮れているかとも思えないがパートカラーの使い方は上手いものだ。若松は海際で女を裸にして走らせるのが好きなんだろう。

(評価:★3)

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