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[コメント] ドレミファ娘の血は騒ぐ(1985/日)

冒頭と収束だけ凄まじく充実している。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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冒頭と収束だけがとても充実している。実にゴダールだが、これだけの密度で再現しただけでも凄いことだ。

これにサンドイッチされたポルノ笑劇は、明らかに温度が低い。日活映画のパロディなのだろう。ポルノだけではなく、加藤賢崇の造形は日活青春映画を想起させるし、歌われる戦前歌謡もまた日活向島という感じがする。序盤の伊丹十三のギャグは清順っぽいし。しかしそれもどうということはなく、80年代にっかつのお笑いポルノの一作という印象。

ただし、ミュージカルと伊丹のヴァイオリン独奏の件には赤旗がたなびいている訳で、ここもゴダールだと云っていることになろう。収束の敵の見えない銃撃戦と併せて、この映画は何かと戦おうとはしている。「映画は闘争だ」などという空語が流行った時期だが、今観れば、客観的相関物のない、目的のないなかで、ただゴダールという闘争の手段だけが与えられているように受け取れる。件のミュージカルで加藤は「大学いい所、モラトリアム」などと歌うが、80年代のキャンパスなどそんなものであった。善意に解釈すれば、下らない元ポルノと無内容な大学生活をWらせることにより、80年代の空疎をよく定着させていると思われる。凄かったり酷かったりするが少なくともゴダール映画は常に敵の顔が見えている訳で、ここは本作のユニークな点と認めていいように思う(あるいは監督のにっかつへの意趣返しだっただろうか)。

(評価:★3)

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