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[コメント] 天國はどこだ(1956/日)

真面目な真面目な松林は木村功を国定忠治で終わらせない。好感を持って観た。金やんは存在感抜群。自身も貧乏だった彼の起用に、込められたものがあっただろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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海際の湿地帯。子供をランプに載せて競馬の仕事に使う塚田組。加藤嘉の親分がさすがの造形で西村晃の下っ端も愉しい。部落の連中はみんな組に使われるニコヨンの沖仲仕で文句云えないし云わない事なかれ主義。

刑務所から戻ってきた国定忠治の木村功の活躍が中盤の痛快な処で、塚田組へのお礼参り、子供に境界杭抜かせ、野球で少年たちの更生を図る町医者の沼田曜一と軽く衝突になり、俺が監督だ、でスパルタコーチを始める。

このノリで全編通せば痛快娯楽映画になっただろう。しかしそうすれば、ヤクザを肯定することになる。真面目な松林はそうしなかった。木村を痛快なだけでは終わらせなかった。本作は後年の日活活劇を先に批評しているようなところがある。

ヤクザがコーチのチームと試合できないと断られた小学校の窓ガラスを子供らと割ってまわり(この子供たちは学校に行っていないのだ)、津島恵子から怒られて一時は更生しようと地味に働く木村。ここで子供たちが離れていくのがリアル。ミカジメで、ただで入れた映画館とか、ただ食いできた屋台が使えなくなり、「兄ちゃんと遊んでもつまらないよ」。

最後は挑発に乗って喧嘩して、沼田が苦労して準備した就職先の海運会社から全員馘首。海運会社に塚田組が連絡していた、ハメられたことを知って「こんなことしかできねえんだよ」と塚田組に突撃する木村だった。

本作は、少年を不良化から守るというスポーツの効用を説いている。冒頭の金やん登場(沼田が先輩という設定)は存在感抜群。駆け足で何かもったいない使い方だが、だからリアルという気もする。自身も貧乏だった金田の起用には、込められたものがあっただろう。「国鉄の金田が来るよ」「誰それ。駅長さん?」といういいギャグがあった。最後の子供たちへのユニフォームを、刑務所に行ったのだろう木村はどうして準備したのか判らなかった。

木村と津島、沼田の顔アップのパンでもって、三人がこれからどうするか苦しく語り合う長回しがいいショットだった。しかし私的ベストは序盤、屋外でオルガン弾いて児童にお遊戯で回らせる津島。冒頭で子供たちに石投げられていた子犬が最後は野球に参加するのが、お決まりを守った演出で美しい。

(評価:★4)

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