[コメント] ジャン・ブリカールの道程(2008/仏)
冷え冷えとしたモノクロによる冬のロワール河と裸木と荒地の連続。緑と陽光に溢れたいつものストローブ=ユイレと正反対にあるドキュメンタリー。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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フランス中央部を流れるロワール河に浮かぶヴェルト島。労働者として生活したジャン・ブリカールのテープ音声で語られるのは大戦前後のこの島の様子。映像はその場所を追い続ける。
冒頭のボートからの島一周の撮影がすごい。もう、観客は退屈するなんてまるで考えていない天衣無縫さ。河はすぐそこにあり、落ちたら凍死するだろうなと思わされる。裸木は整然としている処もあり、そこは植林だったのだろう。
語りはふたつ。ひとつは戦争中のドイツ軍対アメリカ軍の回想。米兵を匿った叔父は殺され、銘板が残されている。12歳だった自らも銃を撃ったとレジスタンスの経験が語られる。
もうひとつはこの過疎の島の来歴。放置された穀物やワインの倉庫。ネズミに齧られた小屋。しかし昔は港もあり、やろうと思えば仕事はあった、河は50年頃に汚染されてしまった。三メートルほどの高さで伐採され、その切り株からメドゥーサのように細い枝が百ほどもつき出ている巨木の群れにインパクトがある。雨のなか広い草地で草を食んでいる6頭の牛の光景がとても淋しい。過疎の淋しさはいずこも同じだ。河面に白鳥を捉えて映画は終わる。
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