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[コメント] ソ連脱出 女軍医と偽狂人(1958/日)

トンデモ映画と知って観る分には罪のないトンデモ映画。「ラーゲルの性典」なる原作があるらしく読んでみたいと一瞬だけ思わされた。細川俊夫の造形の見事さは賞賛に値する。俳優ってのは凄いもんだ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ママ、目が回るよ」「黒い影だ、怖いよ」「悪魔だ」「南無阿弥陀仏」幼児退行し便器壺の中身をぶっかけ、屋根で痴漢する民生委員の梯子外し、ソ連兵の逢引邪魔してバケツは尻の下で潰れ、ちょび髭つけてヒトラー並の演説をする「諸君を幹部に任命する」。「偽狂人の化けの皮を剥いでやる」とソ連兵、足の裏を羽根でこそばされ、睡眠療法とやらをかけられたと知って正常のふりをするという複雑な造形に至る。

冒頭から腹立つ民生委員のゴロツキたち。「同志諸君」「反動的行動」「我々は反動を日本に帰してはならない」「怠ける奴は日本に帰さんぞ」と仕切っているのにラストでは彼等だけ帰還できなかった。ここは留飲の下がる処だが、もっと詳述してほしかったところ。

細川の引揚船「高砂丸」甲板での、女医師とともに世界平和が祈願されるハッピーエンドはとてもいい。ここがいいからトンデモ映画も許されよう。ただ映画全体の気分からは、細川だけが帰国できずにソ連の土になる不条理のほうが的確だったとは思わされる。

舞台は昭和24年のハバロフスク捕虜収容所。夏から秋の出来事で、雪が降らないのは予算不足のためだろう。

なお、主人公は木村荘十二なのかも知れない。ソ連捕虜ではない。彼は満映解散後の東北電影に参加したが炭鉱労働に回され、体が弱いのと、飾ってある毛沢東らの肖像画が下手糞なのを見て、画家にしてほしいと云ったらあっさり受け入れられ、ハルピンの東北画報社というところに勤めて毎日肖像画を描いた(佐藤忠男「キネマと号砲」より)。

(評価:★4)

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