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[コメント] はりぼて(2020/日)

フロイトは「不気味なもの」とは「親しいもの」だと説いた。もしそうなら、この映画で入れ替わり立ち代わり登場する奇怪な連中は、君や僕が抑圧した亡霊たちなのだろう。市長が最高に不気味で小沢栄レベル。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







仕方のなリアル喜劇だが、辞職し返納し裁判にかかり有罪になるのは、まだ真面なんじゃないのだろうかとも思う。20世紀的な真面さに見える。ののちゃん議員は泣いてくれたのだ。21世紀の国政では、誰も謝罪しない、官僚のせいにする(昔も妻が、ってのがあったが。ロッキード事件だったか)。ハイパーリアル喜劇に陥っている。今に地方もそうなるだろう。その兆しは逃げ切って農業に戻ると笑うあの変質者としか思えない市長に見え隠れしている。何が制度論だか。

自民党の議員は選挙活動を駅前でなんか殆どしない。箱ものの中に隠れて各種利権代表の招待者だけ相手にして非公開でやる。五本市議がささっと土下座する。遅れて秘書も土下座する。あの慣れた感じが凄い。続いてオバはん三人がインタヴューに応じ、謝っているからいいじゃん、ネエ、と頷き合う。あの会場には「事務員が記入する時間がもったいない」から請求書を白紙で渡したと云う印刷会社の元社長もいたのだろうし、冒頭の出鱈目審議会の面々もいたのだろう。議員報酬増額の審議会議事録に「議員は除雪もやっている」ってのは何なのだ。一回で止めになる第三者委員会もひどい。

本作が市役所内部の不正も抉ったのは偉い。公民館への情報公開請求した請求者の名簿(テレビ局員)が公民館から議員事務局に伝わり、事務局が議員に漏らしていたという件。公民館所管の生涯教育課長が、このテレビ局の若造めと舐めつつ開き直りつつ狼狽える、細かな心理描写が手に取るように判る件は本作の私的ベストショットだった。当然に守秘義務違反。「役人同士の情報交換はいいんじゃないの」と教育長が一旦答えてしまう勉強不足が情けない。勉強不足で市民の権利が棄損されては仕方がない。

市議たちがゲロする理由は一回だけ、「会派の意向で辞める」というフレーズが聞こえた。中川という市議のドンが出てきて、一週間失踪(!)してから酒呑む金に消えたとインタヴューで答え、最初に辞めて最後は有罪になっていた。しかし彼が自ら辞めたとは思われず、彼は会派の意向は代表していないだろう。「会派」の後ろには後援会とか県連とかの分厚い組織があるはずで、中川市議は失踪の間に回っていたんだろう。市長もそこで繋がっているに違いないのだ。これが見えないのは隔靴掻痒の感があった。続編ではそこに斬り込んでほしい。

あと、最後のテレビ局の件はよく判らなかったが、続編の予告なら歓迎。

(評価:★4)

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