コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 海の純情(1956/日)

元祖『カポネ』のやたら気楽で陽気な歌謡映画。朴訥を画に描いたような若き春日八郎を清順は女難地獄に突き落として弄び続ける。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







導入のインタヴューから名調子の喜劇が最後まで見事に継続する。中編の尺も成功の要因なんだろう。裸になったと思いきや柔道着着ていた明美京子(ヴィーナスの銅像の挿入)という何とも云えないギャグ、投げ飛ばされた相手が突き刺さるマンガのようなジャンプカット。すでに清順らしさ全開。

小田切みきのグラマー、ヴァンプ女優っぷりも麗しく、高友子はキュート。そんななか、春日をかっさらって行く高田敏江の純情。四人から追われて顔中キスマークの春日の女難は、『けんかえれじい』的な清順の戦前日本人男子観との間で永久運動を繰り返すのだろう。ぎこちなく、歌うときだけサマになるのも狙いの造形に違いない。前川清に似ている気がする。歌は上手い。当たり前だが。船長なのに船員に馬鹿にされ続ける小林重四郎もこの運動の一環だろうか。大洋漁業協賛。

なお、劇中頻出するドンガラとは「どうがら(胴殻)」の転、胴殻とは名古屋弁で「〔胴は胴体、殻は骨、の意〕 肉を取り去ったあとの骨。がら。あら。」の意だとネットで調べたら出てきた。転じて収穫なしの意味なんだろうか。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。