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[コメント] 猛獣使いの少女(1952/日)

新憲法発布の年に撮られた日米境界線上に展開される象徴界の葛藤と見れば随分刺戟的なメロドラマ。猛獣とは岡譲司の日帝に他なるまい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







銀座のクラブで再軍備のパロディを歌う「さみせんばろう」の三人組をジャズの歌唱で駆逐する江利チエミ。冒頭からアメリカ国旗掲げて入場する彼女の出自は進駐軍クラブな訳だ。

彼女の育ての親の千秋実は在アメリカ、生みの親の岡譲司は在日本、という複雑さは詳細に語られないが、当然に戦争の背景があるのだろう。岡のジョニーと寅のトニーは明らかに類比されており、これら猛獣は飼い慣らそう、旧日本軍的な岡を捨てて千秋のアメリカについて行こう、血筋など否定してもいいのだ、という主張が読み取れる。

という刺戟的な基調低音があるものの、映画自体はとても退屈なメロドラマ。なかではチエミが岡を「小父さん」と呼び直す件は喚起力があったがそのくらい。サーカス話はすでに井上梅次らしい世界で、大して撮れておらず面白いのは冒頭のゴリラの綱渡りぐらいか。年取った杉狂児は大坂志郎そっくりである。

(評価:★3)

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