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[コメント] ロープ 戦場の生命線(2015/スペイン)

シリアスなバルカン半島のナビゲートにご陽気なラテン系は不適格なのではないか。ベニチオ・デル・トロの色恋沙汰が延々続くと、観たいものが他にたくさんあるんですけどと画面に訴えたくなる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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再びバルカン半島を回想するのは立派なスタンスである。しかしそれはアンゲロプロスの向こうを張るということでもある。本作にはそれはちと荷が重かった。比べれば本作が地名を特定しないのも及び腰に見える(ボスニアと一言だけ出てくるけど)。ロープの主題は『ノー・マンズ・ランド』の地雷が想起されるが、あの切迫感溢れるブラックユーモアと比べるとやはり分が悪い(国連軍への不審のニュアンスに共通したものがあるのは興味深い)。

ユーモラスな雰囲気なのだけどギャグは笑えないのが多い。むしろこれを観る作品なのかとは思った。商店でロープを売ってくれと云ったら「首吊りのために取っておかなきゃならないんだ」と応えられ、現地のギャグのセンスは判らないと感想を語り合う件があるが、ここなど特にそんな感想が出てくる。本作の視点はあくまで外野に留まり、拾った少年がどこで雨風凌いでいるのかも見せてくれないし、牛飼いの女性は先導させる牛を地雷で失ってもいいのかも判らない。

住民自治に委ねられたと、デル・トロらのNPOの遺体引上げは中止させられ、最後に雨が降り、住民たちはオーバーホールした井戸から容易く引上げに成功する。この印象的なギャグも笑えない。NPOなど邪魔なだけだったという皮肉だと解するのが薦められているように観える。すると彼等の本編の活躍は徒労だと云うのだろうか。どうも座りの悪いラストで、NPOまで笑い飛ばすのが趣旨なんだろうか。

往年のロック名曲がしばしば煩いのも焦点を外している。「花はどこへいった」からルー・リード「There is No Time」に繋がるラストには確固たる主張があるが、一方ユーリズミックスの「Sweet Dreams」などは何の意味もなく、作業用のBGMがそのまま間違えて使われたみたいに聴こえる。

(評価:★3)

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