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[コメント] 武曲 MUKOKU(2017/日)

なんと熊切悟達に至る。美術と撮影は相変わらず好調、見処は中盤の道場における壮絶な喧嘩とパンツ丸出しの前田敦子
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ファナティックな父親とその息子。魅力的なテーマだろう。教育勅語みたいな剣道の心得に、警官である小林薫の持つ「剣の業」が肉付けを持って立ち現われる瞬間がある。ここをつっ突き廻せば、いまだ続く体育会系の不気味な倫理が浮き彫りにできたかも知れない(家城の『異母兄弟』の陸軍大尉三國の思想のようなものが出てくるのだろう)。弱い母親というのもワンセットだ。

そして物語は綾野剛の原父殺しだ。ここから立ち上がる倫理観もまた興味深いものだろう。愛憎骨絡みを風吹ジュンが指摘する辺り、事態の悩ましい複雑さが伝わってくる。しかしそれが、父親の遺書で真実を知るというのではどうも弱い。原父がそんな達観した人物では出てくる倫理も知れているだろう、ということで、ラストの健全な剣道に至ってしまう。

村上虹郎の肉付けが弱いのもなぜかよく判らない。被災者という設定は前作『私の男』を想起させ、綾野の荒れ果てた家も前作の続編めいているが、あの訳の判らない迫力に比べて、仏教的詠嘆で纏める本作は温い。例外は墓地に出てくるお婆さん。柄本明にこのレベルの何かが是非ほしいのだが、作品はその正反対を指向した。これだけのことなら、『宮本武蔵』シリーズのほうがずっと刺戟的だ。目を疑わせる前田のパンツはCGまたは吹き替えなのだろうか。

(評価:★3)

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