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[コメント] わたしは、ダニエル・ブレイク(2016/英=仏=ベルギー)

ケン・ローチの不条理(マヌケ)行政もの。まだ撮らんならんのかいと静かに怒っている。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







フードバンクで缶詰を食べるヘイリー・スクワイアーズが激しく心に残る。スプレーでの落書とラストの葬儀の朗読も。淡々とした話法との対照が効いている。ただ、匙加減の問題だが、淡々と進め過ぎ、という気もする処で、マヌケ行政に従い続けるデイヴ・ジョーンズにもう少しユーモアないしブラック・ジョークが加えられてもいいのではないかと一方では思う。ただこの俳優さん、本国では有名なコメディアンらしく、イギリス人はそのように観たのだろうか。その辺のニュアンスが掴めたら印象が違ったかも知れない。パルム・ドッグ賞作品は相変わらず外れがない。

本作は事実が後追いしたフィクション。傑作の証だろう。ローチはチャリティは一時的であるべきと述べている。下記参照。

https://news.yahoo.co.jp/byline/bradymikako/20170324-00069042/

以下は床屋談義。私は経験者だから云いたいのだが、日本の役所はここまでマヌケではない。こんな問題起こしたら首長が落選の憂き目に晒される位の自浄能力はある(でしょ?)。新自由主義にのって民間委託などするから現場の裁量がなくなりマニュアル地獄に陥るんだ(委託図書館など同じ状況なのだろうか)。ただ、例えば生活保護部局などは、一方でウェルフェア・マザー問題など過剰受給に批判が常にあり、一部ではおかしくなって訳の判らない刺繍入りジャンバーつくったりしているから、もうイギリス化が始まっているのかも知れない。

「私は(パソコンの)エラー音ではない」が刺さる。パソコンじゃないと受け付けない、ってのも本邦ではあり得ないだろう。そんな弱者切り捨ては考えられない(でしょ?)。例えば車に乗れないご老人のためになけなしの予算叩いて、殆ど利用のないバスを補助金で運営してもらっているのが地方の疲弊した役場の姿だ。これらも、どこかで潮目が変われば、こんな地獄図になだれ込むのだろうか。民間ではネット優先が広まっているし、公共料金もネット申し込みに誘導されるし。本邦の行政機関はこの映画を職員研修に採用すべし。そして大いに議論してほしい。

(評価:★4)

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