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[コメント] コミック雑誌なんかいらない!(1985/日)

全てを芸能化して決して愉快ではなかったテレビ全盛期の優れた記録。ロン毛の白髪になってなおバラエティショーのコメンテーターに取り囲まれ続ける内田裕也は本作の虚構世界を生き続ける運命なのだろう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







当時の風俗の記録が単純に面白い。もうこの時代になるとテレビ映像は捨てられず保管されており稀少性は別にないが面白いことは面白い。「視聴率にならないから駄目」みたいなフレーズは当時からありふれていて何も穿っておらず、公開時に観ていてありきたりのネタだとシラケたものだったが、いま観ると山田洋次的に地道で丁寧な記録になっている。映画の効用のひとつなんだろう。山口組一和会抗争突入が白眉でやくざの子供が笑える。

しかし作品としては地味。派手な題材も派手に記録しているだけで才覚は感じられない。最後のビートたけしは流石で音声消した撮影もとてもいいのだが、主役持って行かれた内田裕也が置いてきぼりになってしまった。

事件発生に際して報道者は現場に介入すべきか、それとも取材に徹するべきか、というのは昔から云われるジレンマで、介入を良しとした裕也はそのまま報道批判になっている。それは判るのだが、そこからもう一歩踏み込んで主題を明確に提示すべきだっただろう。これでは半端。世間に流される者の悲哀というありがちな処に落ち着いちゃっている。

内田と別居している渡辺えり子との関係は、彼と樹木希林との関係を私小説的に想起させ、その身を切るスタンスは立派。テレビに取り上げて貰えない事件を追う者が偉いのだという応援も立派だ。再見して殿山泰司が悪徳セールスマンの胸触らせて貰う件をなぜか鮮烈に覚えていたのは我ながら情けなかった。テレビなど観るものじゃない。私はここ数年、テレビを部屋に繋いでいないが、時間がとても有効に活用できて快適。お勧めです。

(評価:★3)

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