結婚詐欺、恋人と母親の鉢合わせ、会えない息子のオレオレ詐欺、といった小ネタ集を「感動」へ持っていく手際がいかにもぎこちなく空々しい。演劇に寄り過ぎ、科白が立ちすぎていて気障に聞こえる。きらびやかなフレーズを喋る詐欺師の佐藤浩市を篠原ゆき子が「ネットによく書いてありますよね」と皮肉っているが、そのまま本作の主だった科白全てに当てはまるだろう。「感動」が三連発では安っぽくなるというのもあるのかも知れない。フォークも安っぽい。

本作の美点は渡辺美佐子。駆け落ち女の老境における後悔、とは彼女のフィルモグラフィーの後半に相応しい。こちらが勝手に面白味を付け足しているに過ぎないのだろうけど。