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[コメント] 団地(2016/日)

ガッチャマン世代の宗教SF
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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庶民に辛いんだなあという感想がまず来る。藤山直美夫妻が(被虐待少年とともに)団地を脱出する話なんだ。竹内都子ほか団地庶民の面々の空騒ぎはマスコミ批判とイコールで結ばれている。息子の事故死の際にマスコミに騒がれて強くなり、岸辺一徳失踪疑惑でマスコミにマイク向けられても笑って返す藤山の造形は印象深い。この孤立を映画はトンデモSFで救おうとする。

阪本って猥雑な庶民派という先入観があったので、この団地の面々の切り捨て方は意外だった。『』にしたって愛憎はあるが切り捨てはしなかった。社会派映画を撮り続けるうちに、もう駄目な奴は駄目だと見切ったんじゃないかとさえ思われるオリジナル脚本。本作が救おうとするのは上記三人の他は大楠道代夫妻に留まる。

この救済の宗教SFは思いっ切り空疎だ。湖のある野原が宇宙船のなかという描写は『ストーカー』が想起される。これは意図的だと思う。狂信者の放浪を描いたタルコフスキーへの憧れが比較のため提出されている。比べて本作は、ガッチャマン世代が頭で捻り出した普遍性のない疑似宗教でしかない。そんなこと、阪本は百も承知なことは冗談半分の描写で伝わってくる。宇宙船が団地の空を覆うとき、ハリウッドなら当然宇宙船の影が地面をはってくるショットを入れるだろうに、こういう美味しい処をスルーするのも意図的にチープにしたように見える。

こんな形でしか救済はないのだ、と云っているようで、私らの世代にはこんなガラクタしかないのかと思うと暗澹となる。ただ、大楠の「(貴女は)負けなかったわよ」という呼びかけだけがリアルに響く(同じ登場人物による『』の反復。どちらも美しい)。二年巻き戻した収束は純和風の趣がある。結局、救済などなくてナルセ的な諦念だけがある。

青白いトーンの団地描写が生々しくていい。藤山と岸辺の濁った声でのやりとりは実に味がある。本作の明らかな失点は収束ではなく、中盤に岸辺が町内会長落選と陰口から家に引き籠る件が全然面白くなくてダレること。大楠が藤山の非難に回る辺りも違和感がある。「ありがとう 浜村純です」はいったい何年続いているのだろう。

(評価:★3)

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