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[コメント] トリュフォーの思春期(1976/仏)

コント集としてとても充実しているのがまず美点。これもトリュフォーのハリウッド伝統渉猟の成果に違いない。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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もちろんネタ元ではなく映画の方法としてである。全てを破壊し十階からダイブするグレゴリー坊やの件と、拡声器で軟禁救出を求める少女の件が突出していい。いったい、警察署長は自宅に拡声器を持つものなのだろうか。お仕置きに娘を置き去りにして昼食に出かける両親の厳しい躾は欧米ならではと思う。あと、教諭がいなくなったら突然に迫真の「守銭奴」朗読が始まる件も素晴らしい。比べれば散髪やキス連鎖のネタは劣るが良好。

そして興味深いのが児童虐待発見に際しての真面目な対応。保険医は速攻で校長を呼び出し、発見できなかった担任教師は泣き崩れ、逮捕された虐待者を付近住民は批難のために取り囲み、新聞にも書かれる。この時代にこの対応がもう常識だったのか。さすがフランスだと掛け値なしに思う。家を追い出されて夜の遊園地をさ迷う少年の件が危うさを内包して優れている。望遠でアトラクションの飛行機が彼の頭上スレスレに飛ぶのを捉えて、ぶつかりそうに見えるのだ。不良少年を描いて『忘れられた人々』と見事に対極にある。

本作は『華氏451』や『野性の少年』と並び、最もトリュフォーらしい作品という気がする。高踏派として崇められる巨匠だがその本質はこういう生真面目な人なのだろうと思う。「生きるのは辛いが人生は美しい」と生徒にアツく語るラス前の講義の生真面目さは微笑ましくも頼もしく、子供の投票権まで語るのが箆棒で素晴らしい。何で原題は「お小遣い」なのだろう。

(評価:★4)

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