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[コメント] レッド・ファミリー(2013/韓国)

「この作品で収益が出れば、北朝鮮の子供たちを助けたいと思います」(キム・ギドク.)。この公言に1点加点。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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ある種のブラックユーモア作だが笑いは凍りつく。距離感の取れない題材だから。映画館を出ると、どこかに工作員が潜んでいないかしばらく気になった(私の実家から拉致被害者連れ去り現場は遠くない)。韓国の人ならなおさらだろう。かつてのヤクザ映画はこのようなものだっただろう。

これは本当か、北朝鮮工作員は本当にこのような人たちなのか。観ているあいだずっと気になる作品だ。しかし、そんなことは制作者も知らないに違いない。知っているのは、義理より人情を優先せよという映画百年の経験であり、本作はこれを未来に向かって照射している。のっぺらぼうの隣人も、きっと判るに違いないと。感動的なのはこの暗闇への跳躍、公器としての映画への信頼だと思う。

隣家のサラ金取り立ての危機を救うのが工作のために鍛えられた腕力という皮肉が、単線的になりがちな物語を複雑化している。 前半、工作員たちは自宅で隣家に負けぬ大声で指示などしているが、隣に聞こえてバレバレ、という安い展開にならないかヒヤヒヤした。ここはどうかと思う。ロマンチックなラストはとても良い。

確かに題材・脚本優先の作品で、演出に作家性があるとはいえず、この監督の次回作がこのレベルに達するか未知数だが、私はこの監督、本作を物したことで充分と思う。

(評価:★5)

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