コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 高地戦(2011/韓国)

陣取合戦の主題は西部戦線ものの名画を想起させるが圧倒的なオリジナリティがある。虚しさ一般を描いての強度凄まじい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







件の名画で描かれたのは仏独の軍人の個人としての断片的な交流だったが、こちらは同族なのだ。代理戦争の虚しさが半端ない。飛行機ばかり飛ばして最後は韓国軍にまで爆撃してしまうアメリカ軍への皮肉は明快である。遺品の交換のエピソードはとても優れており、まるで19世紀の名作小説のようだ。

この手の戦記物に阿呆の上官は付きものだが、阿呆な命令出した途端に銃殺されてしまう展開は斬新で痛快である。何でコ・スは眼鏡なしでも大丈夫なのだとか、「戦線夜曲」のメロディはどうやって敵方に伝達できたのかとか、揚足取りは容易いが些細なことである。

若年二等兵のイ・デビッドの屈託がとてもよく、美人スナイパーのキム・オクビンはお愉しみ込みだが同族の殺し合いの虚しさを我々にも伝えてくれた。長門裕之似のリュ・スンヒョンの「(戦争の)理由なんか忘れちまった」という返答はこの傑作を締めくくるに相応しい名科白、この思いはコリアン全ての思いであってほしい。「腕はまた生えてくるよね」と泣く女の子の件に打ちのめされた。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ひゅうちゃん

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。