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[コメント] 実録白川和子 裸の履歴書(1973/日)

後半地味になるのが惜しいが、最良の瞬間は田中陽造らしい情感の炸裂があり捨て難い。「広いねえ、汚いねえ、果てしがないねえ」
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この、東京タワーからの散骨に至る福祉活動の件が最良(通天閣昇る『(秘)色情めす市場』より先行している)。彼女はこの、広く汚く果てしのない世界の観音様にならんとしたのだろうか。その他、冒頭の粉塗れの強姦といい、ピンク映画館のトイレでの集団センズリ描写といい、本作はオトコの生理のやるせなさばかりが狙い撃ちにされている。

「ピンク映画も所詮は搾取なんだ」「俺はベトナムに行くぞ」と怪気炎上げたのに白川和子にベトナム行の旅費出すよと云われて断っちゃう同棲相手のヘタレ振りがまた哀しい。ベストショットは君が代を聴いてファックを中断しちゃうタクシー運転手。後半の軟禁の件も真面目なプロポーズの件もやるせなさの一環なのだろうが、ここが残念ながら盛り上がりを欠いた。並べ替えができないのが実録の不自由な処、前後半入れ替えられたら秀作だったたろうに。

しかしまあハードな人生であることよ。顔と発声のアンバランスが宙に浮いたような白川和子の魅力はこの興行作でも揺るぎなく、ハードな人生を地に足つけずに通り過ぎたに違いないと思わせられる。ぬけぬけとした殿山泰司の社長もさすが。

(評価:★4)

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