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[コメント] ときめきに死す(1984/日)

愚かしいバブリー映画。なお原作はとても面白い。映画など観ずに原作を読まれることをお勧めしたい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







中年太りの沢田研二はまるでテロリストに見えず、テロリストに「動機は何ですか」と尋ねる杉浦直樹の間抜けっぷりはどうかしている。面白い画もどこにもない。どこでもいい、例えばふたりがボートで釣りをする描写、沢田が岸辺一徳を殺す海水浴シーン、沢田が転がすキャンディの大瓶、どれもこれも貧相このうえない。

沢田の実家の件などまるで意味不明。全体に、描写に説明を加えることを潔しとしない、というスタンスが仄見えるのだが、そこに根本的な勘違いがある。ヌーヴェルヴァーグなどどれも説明過剰を旨としているのだ。比べれば本作は、異文化に晒されることを前提としない内向きの作家が陥る、雰囲気だけの映画の典型。ね、格好いいでしょ、と観客に擦り寄るばかり。そしてそこで連発されるのがバブリーな意匠では阿呆らしいばかりである。

原作からの頭の悪い改悪も無惨だ。杉浦の内省、テロへの時代遅れの共感を描かないのでは、彼は何のために登場しているのか、さっぱり意味をなさない。収束の愚かしい改悪も酷いもので、これでは沢田がただのアンポンタンではないか。封切り時に観ていて、もう少し何ものかであった記憶があったんだが、まるで勘違いだった。『家族ゲーム』にあった何かが本作ではすっぽり失われている。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ぽんしゅう[*]

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