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[コメント] 港の日本娘(1933/日)

女について回るばかりの木偶の坊、斎藤達雄の愛おしさよ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







背中ばかり写したり、半ば茶化したような字幕を連発したり、清水印のケレンミたっぷりの女学校時代が、事件後にリアリズムに取って代わる。この違和感たっぷりの落差が本作のキモであり、がらんどうの木造アパートのシークエンス・ショットが少女時代を回想するとき、陽気なケレンミがカフカの夢のように浮かび上がる。毛糸玉のダンスと耀子との再会のみ、トリッキーな演出が現れるが、これは女学校時代の再現だからだ。清水印を相対化した、実にクレバーな作品世界である。

堕ちた女の自省を説く物語は傾向映画への批評があるはずで、単なるメロドラマではない。及川道子のオーバーな顔の演技が、サイレント映画にしか表出できない悲哀を表して心に沁みる。斎藤達雄は同年の成瀬『夜ごとの夢』と同じ役回りで、どちらもハマっている。ついてくるままにさせる及川道子がまたイナセでいい。ああ松竹蒲田の美しさよ。

(評価:★5)

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