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[コメント] 4ヶ月、3週と2日(2007/ルーマニア)

本作のド壺から遠ければ遠いほどそこは女にとって生きやすい世界だろう。最悪の尺度のような映画だ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ホテルの冷笑的な接客態度は恐ろしいものだ。IDがどこまでも必要な制度は、国民をまるで本邦の外国人のように扱っている。共産圏の警察権力が強大な国の恐怖が、違法な中絶により剥き出しになる(しかし何で共産圏で中絶が違法なんだろう。キリスト教から自由な共産国は中絶を何とも思わず、中絶手術とソ連は関係が深いと何かで読んだことがあるのだが)。無論、この不幸は共産圏とともに終わった訳では全然ない。

頼りないルームメイトローラ・ヴァシリウの造形が素晴らしい。可愛い娘なのだが観客は嫌悪を覚えざるを得ないのだ。中絶で流れるであろう血を覆うためのビニールは忘れてくるが闇医者へのケーキは忘れない。「ウソをつくなら前もって云ってよ」「忘れただけよ」等々。闇医者の色んな屁理屈に従わざるを得ない情けなさ。

ボーイフレンドの頼りなさ。お母さんの誕生日も大切だよねという諦め。なぜこの男は私に協力してくれないのか。母親へのプレゼントを忘れて叱責されたら、そりゃもうどうでもよくなるだろう。この長い長い誕生パーティの空疎さ。一瞬電話が鳴るのが聞こえる。 ホテルに戻った時、眠っているルームメイトは驚愕ものだ。あと二三日の奔走を覚悟したとき、事は意外に早く終わっている。玩具のような胎児を目の当たりにする悲痛(タイトルはこの子の年を数えて追悼している)。抱えてビルの10階のダストボードに放り込む。これは正しいのか? ホテルにID忘れていくとても間抜けな闇医者の指示通りなのだ。なんたる受難。

色んな人間関係が終わっているが、主人公はそれでもここから続けるのだろう。東欧っぽく無骨ホテルのロビーや路面電車(LRTか)は愉しく、また禍々しく見える。ベストショットは下半身裸でバスルームに飛び込んでくるアナマリア・マリンカ。再見。

(評価:★5)

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