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[コメント] ロイヤル・スキャンダル(1945/米)

ルビッチはアメリカで他国の政治をネタにし続けた。ルリタニアものが多いが本作などはロシア(とフランス)をご指名のうえでさんざギャグの肴にしている。これは、ハリウッドの文化政策だったのだろうか。ソ連との冷戦は間近。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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エカチェリーナ2世はヴォルテール、ディドロとも文通した教養人にして玉座の上の娼婦と呼ばれ、45歳で結婚した年下の夫は映画史に名を残すポチョムキン公爵。そして権謀術数数知れず。塩辛声で皮肉を喋りまくるタルーラ・バンクヘッドはそんなイメージにぴったりなんだろう。冒頭、彼女がなかなか登場せず、引っ張りまくるのが上手い。そして「フランスはルイが多過ぎる」ほかいいギャグが飛び交うなか、引っ張った相手の慇懃無礼なフランス大使がラストでまた登場するのが爆笑もの。いったい何日、謁見を待っていたのかという。

戦争は嫌いだが黒海はほしいという彼女の論理は教養人の政治家に相応しいギャグだろう。狂ったように彼女を崇拝するウィリアム・イースがいいし、24歳と知った途端に彼を閨房に入れちゃう展開が箆棒。♪尊いお方とする時にゃ羽織袴でせにゃならぬ、のヨサホイ節の世界。「陛下」「カテリーナと呼んで」。シャンパングラス放り投げ続けるのも箆棒。

一晩で大佐。で、彼が農民は搾取されていると政策立案を始めるのが素敵で、バカ話の挿話として素晴らしいと思う。彼の婚約者で三角関係に開き直る女官のアン・バクスターが魅力的。すわクーデターの折の宰相チャールズ・コバーンの策略の件がいい。寝返ってクーデターに協力する振りをする処だけが描かれ、次の瞬間にはクーデターは失敗しているのだ。ああ彼が暗躍したんだなと判る。省略の効いたとてもスマートな演出だった。

私的ベストショットは床にぶっ倒れたタルーラ・バンクヘッドをウィリアム・イースが担ぎ上げようとして尻もちをつく件で、いいアクションのフルショットがあった。

(評価:★4)

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