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[コメント] 女人哀愁(1937/日)

大家族の混雑を襖の開け閉めとキャメラの微妙な移動で追いかけ続けるタッチが非ナルセ的で新鮮。タイトルもそのもののメロドラマはもうこの時代パターンが出尽くしているの感。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ばら撒かれる悪役たちと「お暇するときが参りました」で締める入江たか子の忍従ぶりはすでに東映ヤクザ映画並みの様式化が見え、タイトルもその印象を強める。親の意見優先で嫁ぐ設定は戦前映画につきリアル。嫁ぎ先は当人よりも家みて決める、みたいな。

入江は髷結って嫁ぎ、屋上から銀座の空を眺めて嘆き、髷を落とし、最後に再び屋上に上がる。私みたいに古臭い女、とは、北沢彪に呟く「いつか判って貰えます」に凝縮されるのだろう。

限りなき舗道』のような傾向映画的主張はないが、泥棒を救うラストはこれを踏襲しているだろう。ただそこに今ひとつの詠嘆がなく、澤蘭子のクライマックスにおける心変わりにも深みが感じられず、これはいかにも欠点で決め切れていない。

子役たちは愉しく、特に宿題をなかなか見て貰えない嫁ぎ先の丸坊主の次男坊がいい。訪問した入江の弟をいつまでも帰さないのは、この子も家が嫌いなんだろうと思わされて繊細。出戻りの澤も交えて始まる麻雀とか、次女の女高生友達との放埓とか、クライマックスに黙り込んで去ってしまう清川玉枝とか、メロドラマらしい演出がいちいち穿っている。

(評価:★3)

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