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[コメント] 明治天皇と日露大戦争(1957/日)

「杉野はいずこ」はじめ戦前の軍国美談のオンパレード。渡辺邦男がこういうの大好きなのは伝わってくる。それはもう、充分に。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作に特徴的なのは、その軍国美談のエピソードが大将クラスの面々に限られ、天皇とのファミリー的親密な関係が謳われることで、まるで天皇と藩閥政治の蜜月時代の礼賛のようだ。類似作にありがちな二等兵物語の類の挿入は殆ど何もなく、国民はただ提灯行列して喜ぶ兵隊蟻として示される。

戦争に慎重なのは天皇だけ、他は全国民が熱狂(悲憤慷慨の壮士が演説するだけなんだけど)という図式的な導入部は空々しく、まるで理性的人間は天皇しかいないみたいだ。やたら聖断を下して天皇機関説を思いっ切り否定しているのは構わないのだろうか。大国主義と植民地戦争への省察に至ってはまるでなく、最後には戦争は「世界平和への貢献」であったと総括され驚かされる。

まあ、真面な見解を期待しても仕方がない訳で、この右翼監督の頭の中を眺めるサンプルと割り切れば、それなりに興味深い。こういう人物には、天皇を人間として描くのからして大決断だったのだろう。皇居の周りにいる出征兵に天皇が挨拶して廻る件があり、これなどもう事実に反するあり得ない嘘だが、現人神だと偉そうにせずこのように国民に接してほしかった、という製作者の願望(嫌味)と受け取るなら、感じる処がある。政治関与に抑制的な海軍幹部の描写が昭和への嫌味として機能しているのが美点。特撮は貧しいが撮影美術はそれなりにいい。日本海海戦に鳴り響く軍艦マーチはパチンコ屋みたいで笑ってしまう。

(評価:★2)

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