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[コメント] スタフ王の野蛮な狩り(1979/露)

ホラーのホームズ風謎解きが理に落ちてあんまり面白くないが、それは詰まらない20世紀を始めるための儀式だったのだろうか。謎かけの不思議、ロシアの平原、青を強調した画が記憶に残る。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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タイトルの最中に抜かれる主人公放浪の様子、雨宿りの館、女主人は箆棒な美人、民話の研究をしていると云うと「未開人の幻想に意味などありますの」と怒って引っ込む。夜中に流離うと羽毛のなかから現れる全裸の美女、明け方に始まっている女主人の成人式。この掴みはとてもいい。

中盤以降も意味不明を呼ぶ箇所はとてもいい。円盤型のオルゴール鳴らしてオルガン弾いたら、馬車の迫ってくる音が鳴り響く件がすごい。本作の音の使い方(音楽も音響も)は箆棒にいい。「昔の城には盗み聞きの仕掛けがあったもんです」なる謎解きは、本当に謎解きなのか不明なのがいい。広大な大地がまた魅力的で、その樹木が一本、突然倒れる件も印象的。沼地で死んでいた執事とか、降雪とか、兜を取ったら藁と動物の頭蓋骨だった騎士とか。旅芸人の人形劇、首切った断面から鳥や蛇が出てくるカラクリがすごい。ああいうのはあったのだろう。

物語は、意味不明に見えたものの意味を探り当てることを主眼としたものだと判明してくる。誰かが死ぬ前に現れる小人とは、執事が隠して養育していた小人、及び乞食の子供たちだと知れる。夜中に花嫁衣裳で駆けまわるのは女主人で、居場所を悟られないためだと告白される。最後は女主人の叔父の遺産目当てだと判明する。

こういう謎解きはホラーとしては退屈だが、ものには全て原因があるというホームズ的、唯物論的な主張と考えれば得心が行く。ただ、ホームズ的な解決の快感がほとんどないものだから、これなら幻覚のままのほうが良かったと思ってしまう。農奴に同情的だったスタフ王、という序盤の紹介からして、彼に同情的なのは明らかで、話のベクトルも判りやす過ぎただろう。

主人公が最後に騒乱罪で逮捕、時は1901年元旦という『アレキサンダー大王』みたいな結末は、きっと深い意味があるのだろう。私には残念ながら判らなかった。本作の謎解きはこの詰まらない20世紀の曙を迎えるための儀式だったのだろうか。

(評価:★4)

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