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[コメント] うたかたの戀(1936/仏)

見事な視線劇。濁った視線の交換で混濁した世界をダニエル・ダリューの澄んだ瞳が浄化し裁断する。撮影編集も流麗。
寒山

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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シャルル・ボワイエと密会中、ダリューが妃(ボワイエの母)に見つかり、非難されるかと思いきや同情を示される件がとてもいい(「お幾つ?」「17です」「17の頃、私はもう不幸だったわ」)。ボワイエの貴族の不幸に倍音が添えられ、ここから話は道行に急転落を始める。そしてダリューが娘らしい頑なさで皇帝までをも言外に非難する痛快な舞踏会の件が続く。

ボワイエの事情に付き合わされたダリューが可哀想、という批判は的外れだろう。ダリューの造形は狂気を志向しており(『晩春』の原節子に近い)、死への親和を示している。世の東西問わず、厭離穢土、道行とはそういうものだろう。

若きボワイエを初めて観たが、線の細い役処から禿げ上がり具合まで天知茂そっくりだ(逆だ)。貴族的退廃の描写はしつこくないヴィスコンティの印象。王道音楽の連発は対位法的に貴族社会を戯画化していて効いている。当時のオーストリア国歌がドイツと同じというのが個人的に発見(ハプスブルグ繋がりなのか)。私的ベストショットはふたりのキスシーン(直前でカットが変わる)を捉えた絶妙なアップの俯瞰ショット。ふたりか舞踏しなから話者が反転してキャメラを向き続けるショットも何故か好きだ。

(評価:★4)

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