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[コメント] 石の花(1946/露)

子供向けファンタジーに纏めてあるが、技術者の業と異界の美術に民話らしい常識外れがありここは凄い。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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先輩たちが絶賛した鉢をこんなもん駄目だと激情とともにぶっ壊すダニーラ。天才の苦難。やたら盛り上がる。そして銅山の女王なるとんでもない女に導かれて秘宝巡り。ここが凄い。どんな美しい光景だろうと待っていたらとんでもないグロテスク。鍾乳洞なのだが、巨大な内臓みたいなのだ。本来の美とは我々の常識に収まらぬものだと示して強烈。垣間見えたラカンの現実界という趣まである。

ここからの収束は緩い。いかにも社会主義の美術っぽい馬鹿でかさがマヌケな「石の花」を完成させたダニーラは、これで芸術は終わりとばかりに新妻恋しさに帰郷する。これ、民話の常で、後世に書き足されたに違いない。主人公がこのままいなくなるのが本筋だろう。美に狂ったダニーラがのこのこ還ってくる訳ないもの。勝手にこちらのラストを採用したい。

新妻カーチャが石細工を学んで行商する件は、ほんの細部だが美しい。彼女が主人公を待つ時間を湖の四季の経過でさらりと示した描写も、サイレント仕様で感じいい。この辺り、なるほど、とても少女漫画っぽい。銅山の女王が大木を倒して橋にする件も良かった。

メモ:終戦時接収したドイツのアグファ社の技術によるソ連初のカラー長編。不安定な発色はある時期までのソ連映画を特徴づけている(allcinema)。日本人が観たはじめてのカラー映画という情報もあった。だから多くの人が本作を熱く語るのだ。

(評価:★4)

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