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[コメント] 陸軍残虐物語(1963/日)

三國西村の箆棒対決による二等兵虐めの恨み骨髄は肥溜め描写で極められ、盆暗な三國と大日本帝国に縋って生きる儚い人生の岩崎加根子が可哀想過ぎる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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本作が突き抜けているのはもう、あの肥溜め内部の美術による。映画はジャンバルジャン系でよく地下下水道の描写などするが、なかでも屈指。中に入ったら刺激臭で気絶するのではないだろうか。人間の条件、という気がする。

「もっと要領よくなれよ」と中村賀津雄に云われるのももっともだと思わされる三國は、冒頭いきなりの焦点定まらぬ眼、虐められてバケツ被って、西村殺害の一瞬フランケンシュタインのような微妙に傾いだ佇まい、どれも抜群。故郷の裏山で自分を山狩りする松明を眺める、とは何という体験だろう。

西村晃も岩崎を見初めた瞬間のアップの舐めるような眼つきとか、最期の便所での両手を扉に当てた鳥の真似のような奇怪なポーズとか、忘れ難い迫真力がある。江原真二郎のエゴもすごいし、被害一方でない、江原に加害も働く一等兵中村の哀れな係長振りもドラマを複雑にして素晴らしい。

冒頭で軍のリンチ禁止の通達が語られるが、上官は言下に否定する。棚田が云いたいのはここなんだろうと思った。西村が三國の配膳ひっくり返す「立て膳」(仏さんの配列)とはどんなだろう。ネットで調べても出てこなかった。兵隊が暗誦されられている「兵の心得」「軍の本義」とはどんなものだったのだろう。助監督は降旗。優しいギターの劇伴に救われる思い。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)水那岐[*]

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