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[コメント] 青春デンデケデケデケ(1992/日)

祭りの準備』と比べるのは酷か。観ているうちは面白いが、登場人物が見事に善人ばかりのノスタルジア、お幸せで結構ですねという感想しか出てこない。坊主の息子のキャラや八百屋お七、初デートの件は好き。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ベンチャーズはロックの元祖」など考証に明らかな間違いがあるのは観ていて気になる。当時は「ロック」などとは云わず、「エレキ」ブームだったはずだ。原作は詳細なものらしい(未読)が、どうなっているのだろう。ただ、高3の学園祭でベンチャーズを余り演奏しないのは、冒頭の絶賛振りから見たら妙なのだがリアルらしい。「勝ち抜きエレキ合戦」は2年で終わり、彼等のブームは67年には沈静化していたとのこと。

以下忘備録。64年に2社だった国産ギター・メーカーは、本作の舞台となる翌年には一気に50社に増えている。全国的なブームだったのだ。しかし、同年10月に足利市教育委員会が「エレキ禁止令」を出したの皮切りに、全国の中学高校で類似のお達しが蔓延、マスコミも同調し、66年にはエレキ・ギターは在庫の山になったとのこと。同年、ビートルズが来日するが、どこかで読んだ確か音楽批評家氏の回顧録では、小学校からの帰路にお祖母ちゃんが待っていて、どうしたのと聞くと、ビートルズという悪魔が来るらしいから心配で迎えに来たと云われた、とあって印象的だった(この武道館公演、三島由紀夫が演奏中ずっと後ろを向いて客席のほうを眺めていたと記したエッセーがある。もちろん末世と嘆くのだが、数年後には楯の会の制服をビートルズに対抗したと宣伝に使うことになる)。だからドラマーのお祖母ちゃんが演奏中に踊っているのは異端というべきで、このエレキ=不良という時代の空気は、何故か(まあ、悪人を登場させないためだろう)本作では丁寧に除かれている。

本作は邦画に高校生一芸突破ものとでも呼ぶべき類型を作り出したのだろう。『がんばっていきまっしょい』『スウィングガールズ』『リンダ リンダ リンダ』などは、本作との比較で鑑賞されてきたと思う(同年の『シコふんじゃった。』は大学もの)。比べるとこの元祖の特色は、上記の善人しか出てこないこと、それと生徒たちが、最初から楽器があり得ないほど巧いことだろう。私の好みでは、後者3作のほうがはるかに優れている。

(評価:★3)

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