[コメント] 傷跡(1976/ポーランド)
住環境破壊そのものを問うのか、その段取りを問うのか。どうやら後者の印象が強いのだが、工業化に伴う悲劇はどこの国でも似たようなものだと思わされる。「頼りは安らかな良心だけだ」。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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オレツコという開発から見放されていた町に肥料工場が誘致される。都市計画も設計コンペもない。森が1万ha失われ井戸水も枯れた。爺さんが住んでいる家にユンボが迫る。さらに拡張。コンビナートの太い配管への落書。
冒頭に「窓辺作戦」と呼ばれた、お偉方に見せるためだけに集められた庁舎を取り囲む住民たちの姿は、最後の暴動でアイロニカルに反復される。まあこんな無茶すれば反発も喰らうだろう。娘のエヴァは権力者の父を嫌う。「人を使うなんて無理なのよ。お父さんがいなくても全ては回っているわ」。事実なのか虚構なのかも映画では示されないのだが、それでも不安定な工業化(肥料工場)の有様は伝わってくる。
共産圏の頃のポーランド映画を観て思うのは常にTV局が反体制であること、体制側も報道の自由をそれは仕方ないんだと遵守していることだ。TV記者は問う「良心は安らかですか」いい問いだ。応えて曰く「そうでもない」。彼はこの問いを後にも繰り返す。「頼りは安らかな良心だけだ」。
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