スピーディな場面展開はマルクス兄弟をも凌駕しており実に現代的。今日テレビで新作としてかかっても違和感ない出来だ。伊丹の『国士無双』のような傑作がすでに戦前にあるのだから驚嘆するほどのオリジナリティでなないのだろうけど。市川監督のこと、このタッチは海外アニメの影響なのだろうか。誠に素晴らしい。

ギャグが説明不足だろうとこれを置き去りにして、ともかく場面展開を急ぐのだという編集で統一されている。平次が通りかかり客が窓際に押し寄せると髪結屋が船のように傾ぐアニメっぽいカットがいい。冒頭の現代劇から時代劇に移行する際の轢かれた猫の連鎖はシュールだし、小判の形変え続けるギャグも馬鹿馬鹿しくていい。伊藤雄之助の八五郎の醸し出す味も好調。平次が別に成功の足掛かりを掴む訳では全然ない収束も洒落ている。あとは大谷友右衛門にも少し魅力があれば云うことないんだけど。