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[コメント] 女侠一代(1958/日)

男前の清川虹子を満喫。飯田蝶子との親子喧嘩など凄い豪華。清川ファン必見。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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任侠映画はたいてい、敗北の美学を謳いあげるものだろうが、本作の前半は明治期におけるやくざの成功が描かれる。これがとても興味深かった。あらくれ連が蝟集する炭坑、やくざの鉄道敷設と川船頭に分かれた激突、鉄道院に取り入って成り上がる清川、表彰されて我が世の春、そして使い捨てられる。このような官僚と任侠との関係が綿密に描かれ、見応えがあった。完成成った鉄橋の脇に骨壺仮埋葬された清川のラストが印象的。土建業にはこういう歴史があるのだろう。

後半は、この傑物もまた弱い女であるとの展開。亭主の浮気封じのまじない(足袋を石臼に敷いていた)など面白い断片もあるのだけど、何か当たり前になっちゃった。若い燕の森美樹の造形も焦点が当てきれず半端で、清川の哀れがもうひとつ迫ってこなかった。あと、田中春男についてきた淡路恵子が同居に至る説明はカットされているのだろう、彼女が何しているのかよく判らなかった。

豪勢な美術は大いなる美点で、冒頭の河岸での任侠喧嘩からしてエキストラ大量投入で凄い。タイトルバックに使うのがもったいないだろうに。架橋のセットも凄いし、小屋の炎上をほんのワンカットだけで使うなんて、今の邦画には考えられない贅沢だ。これをワイドで撮り切る撮影も優秀。豪華俳優の端役登場連発もリッチ。

清川や田中が実直な造形なだけに、三國連太郎の空惚けたような演技が際立っており味わい深い。満州での森繁の厳しく優しい造形も印象的。ベストショットは藤間紫の芸者のお盆使った舞いから、一転森美樹の殴り込みになだれ込む長回し。

(評価:★3)

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