寒山拾得さんのコメント: 投票数順
肉体の悪魔(1947/仏) | 戦争で引き裂かれる恋の話は多いが、本作はこの物語構造を挑発的にひっくり返し、欧州貴族社会の国民国家への敗北を嘆いている。 [review] | [投票] | |
アデル、ブルーは熱い色(2013/仏=ベルギー=スペイン) | 現代風の編集だが、仏の思春期映画はソフィー・マルソーの昔と同じ。一本筋が通っており真面目で、通り過ぎて気障でもある。サルトルの引用が記憶に残る。 [review] | [投票] | |
アコーディオン(1934/露) | みんな笑っているミュージカルによるコルホーズのプロパガンダ映画。この恐るべき明るさの農村、横一列に腕組んで行進する娘さんたちの大らかな男漁りが強烈でとても印象に残る。何なんだ。 [review] | [投票] | |
ステラ・ダラス(1937/米) | メロドラマの原石のような作品で、アメリカ享楽の20年代が批評される。ベイビーフェイスのバーバラ・スタンウィックこのとき既に30歳、充実した素晴らしい造形(含『母の曲』ネタバレ)。 [review] | [投票] | |
夜よりも深い闇(1946/米) | 中年と若い男女の三角関係はフランス、という定跡が踏襲されるのだろか。丸顔で団子鼻のスティーブン・ジェレイがサイコスリラーに適任とは思われず。ただ『上海から来た女』を想起させるラストは素晴らしい。 [review] | [投票] | |
静かについて来い(1949/米) | 表層批評好みの作品の一典型で、突然脱線する黒沢ホラーのタッチの源泉がここにあるのだろう。積極的な物語の軽視、視点の無視、映画的無意識と強度の重視。こういう映画の観方もあるのだという学びがある。 [review] | [投票] | |
秘密指令(1949/米) | 気楽なフランス革命史劇で中高生向け。愉しんで学べる学習雑誌の付録漫画みたい。いいシーンが幾つもあるが、勝ち負けが決まっているから話が大雑把に流れるのは仕方ないのだろう。 [review] | [投票] | |
ビッグ・コンボ(1954/米) | 投げやりな囚われの美女に惚れる峰岸徹みたいな偏執狂刑事。ヘアトニックの味がする作品。話はありきたりだが部分的な強度は優れている。部分だけを観せたい表層批評好みの作品なんだろう。 [review] | [投票] | |
チャイナ・ゲイト(1957/米) | 愚かしいプロパガンダ映画。共産軍絶滅のために仏外人部隊が大活躍するが、製作年は仏軍のベトナム撤退の年であったという間抜け。フラーがナット・キング・コール連れてこんなものも撮る経過は何だったのだろう。 [review] | [投票] | |
サラリーマンどんと節 気楽な稼業と来たもんだ(1962/日) | クレイジーを使い切れず東宝との争奪戦敗退で有名な大映最終作。コツコツやる奴川崎敬三の古典的な賞賛は開き直った東宝作と鮮やかな対照、時代の転換点を示すのだろう。コメディは面白く潮万太郎さんファンは必見。 [review] | [投票] | |
毒蛇のお蘭(1958/日) | 着痩せするタイプの小畑絹子に大した露出もないのに悩殺されそうになる。後半は若杉嘉津子との女の対決という好ましい展開。出たと思ったらすぐ殺される可愛い松浦浪路が不憫。 [review] | [投票] | |
20世紀アワー 大東亜戦争(1968/日) | 国民がニュース映画などで見せられたままを繋いだ太平洋戦争の記録。冷静なタッチだが編集しながらオーシマが激怒しているのがよく判る。滅多に見られない映像が含まれるのも吉。題字は岸信介(!)。 [review] | [投票] | |
私のベレット(1964/日) | 学生映研レベルの詰まらないコメディのオムニバス。80年代広告批評の先駆的な視点があるが、それも結局は広告でしかない。 [review] | [投票] | |
続日本暴行暗黒史 暴虐魔(1967/日) | 自閉的な男の性欲の病を苦役として煮詰めて、享楽指向のロマンポルノと一線を画しているのが若松らしい。劇伴のバッハがやたらリリカルで、神の前でどう申し開きをするのか突き詰めているかのようだ。 [review] | [投票] | |
日本暴行暗黒史 異常者の血(1967/日) | ゾラ『獣人』みたいな話だが、悪い血の遺伝なんて話にリアリティがない現代では封建的な絵空事でしかなく、何がしかの批評性も見出せない。撮影美術もルノワールに大敗。 [review] | [投票] | |
原発切抜帖(1982/日) | 偏屈者の繰り言にお付き合いをと語るのは小沢昭一。高木仁三郎が監修。原子力船むつの頃から原発には馴染めないものがあったと、10年続いたスクラップブックが繰られ、渦巻く疑念が纏めて語られる。 [review] | [投票] | |
六ケ所人間記(1985/日) | 取材は歩いてマイク向けるというベーシックな方法で5年にわたっており、監督の2歳だった息子は成長して騒がなくなり、明治人の入植者の苦労が桁違いの補償にもって行かれる様が詳述され、しかも石油備蓄基地の一部がウラン濃縮工場等に転用される。 [review] | [投票] | |
アンダー・コントロール(2011/独) | ドイツ原発、前半の完璧な安全管理ですという自信満々の報告と、後半の廃炉推進の地味な報告。転換点はチェルノブイリ事故だが、原因は他国だろうが関係ないのだった。カルカーのシュールな空中ブランコ付。 [review] | [投票] | |
二人の銀座(1967/日) | 話は地味だが愉しい歌謡映画。表題曲はスネアのロールがやたら格好いいし、アイドルのアルバムの埋め合わせみたいな和泉雅子「踊りたいわ」が可愛い。撮影美術も相変わらず極上の日活モノクロで、OPタイトルからして格好いい。山崎善弘さんのご冥福をお祈りします。 [review] | [投票] | |
鶯(1938/日) | 戦前のオイコラ警察を田舎の啓蒙組織として捉えたうえで、制度を超える人情を希求している。戦前昭和の地方をユーモラスに描いて、群像の全てが興味深かった。警察の板間に正座する藤間房子のお婆さんが心に残る。 [review] | [投票] |