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[コメント] 1917 命をかけた伝令(2019/英=米)

サム・メンデス監督よく頑張った!インタビューとかでもワンカットへのこだわりを語ったりしてますが、ワンカットだったら面白いわけではないのはわかっといてね。
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アカデミー賞は惜しくも逃すも、ゴールデングローブ賞のドラマ部門で受賞。戦争映画でありながら、ワンカット風演出に挑んだ話題作ですね。 戦争映画でのワンカットへのこだわりというのは正直すごいの一言ですね。 銃撃戦や飛行機墜落など迫力のある演出。天候の影響ももちろんありますし、そういう難点を乗り越えてのワンカット風撮影には、さすがに監督やスタッフ陣に拍手を送るしかないですし、その試みに頭が下がります。

ただ正直なことを申し上げると、すごいはすごいんだけど普通でした。やはりワンカットによる作品への没入度は他の作品とは比べものにならないし、まるでその場にいるような体験ができるというのは、1917年4月6日の出来事を時系列に沿って映した本作ならではの魅力だと思います。

しかし、見終わった後の、すごかったんだけど物足りなさも感じた要因を考えた時に思ったのは、ワンカットだからこその弊害だと思いました。

どうしてもカットを入れない都合上、間延びは避けられない部分はありますし、特に伝令を届ける地に赴くまでの気だるさみたいなものを感じたのも否めません。 それも主演二人のスコとブレイクの疲労やら焦りやら苦しさやらを感じさせるものなのかもしれませんが、そもそもの問題として、我々観客は彼らとは同じ時間軸にいないという点にあると思います。

当たり前の話ですが、一日を追って撮っているからと言って24時間カメラを回すわけには行きません。だから2時間にまとめる必要があるのはやむを得ません。とは言え彼らが一日をかけて移動せねばならない距離が短くなるわけがなく、それなのに我々が体感するのは数十分の距離にまとめられてしまう。正直「移動距離短っ!」と思った部分があるのは否定できず、だからと言って移動やら全体の部分を引き延ばせば間延びが生じ、この辺りに根本的な誤差が生まれるのは致し方ないとは言え、ワンカットの欠点とも言えると思います。

だから上映中に「どうやって撮ったのだろう」「切れ目はどこだ」「監督すげえな」とか没入しているにも関わらず、いらぬ余裕が生まれて余計なことを考えてしまうということは、試みとしてはすごいけど、それも一長一短なのかもしれないとも思えてしまいました。

つまり戦争映画をワンカットで、という攻めた挑戦には価値があると思いますし、風景描写の美しさやら円環構造の作りでまとめるなど、評価すべき点は多々あります。 ただ、かと言ってイコール面白いわけではなく、ストーリー自体も単純で、これを撮った監督やスタッフには称賛が送られるべきですが、作品としては手放しで称賛とはいかないかなとも思ってしまいました。

(評価:★3)

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