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[コメント] デトロイト(2017/米)

人種差別はもちろんだが、大切なのは現代に根付く社会派作品として捉えること。作中にチラッと映るワンシーン、ミシガン州の警察がさながら我々傍観者たる一般人を指すのではないか。
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**ネタバレ注意**
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ハート・ロッカー』『ゼロダークサーティ』と立て続けに話題作を生み出したキャスリン・ビグローですが、今までの作品は今一つハマらなくて。それでも今作の出来はシビれるものがあったと思う。

デトロイトで実際に起きたアルジェ・モーテル事件を元にした展開が中心で展開される。後になってから調べると40分程度だったそうだが、個人的には1時間くらいに感じた。それぐらいに凄まじいシーンだったと思う。

とは言うもののそこまでの持っていき方も結構丁寧な作りだった。時代背景を簡単に説明するために用いた意表を突く冒頭のアニメーションシーン。そして謎のガサ入れからの取り締まりをきっかけに膨れ上がっていく暴動。 正直とてもアメリカ国内で起こっていたこととは思えない実状が映され、さながらイラク戦争だとかアメリカが他国に対して敷いていた体制のようで、街中を銃を持った警官が歩き回り、戦車が走り、窓から外の様子を伺った少女ですら狙撃手と疑われて集中砲火を浴びる現実。恐ろしいのはそれについて説明があるわけでもなく、結末を見せられるわけでもなく、あくまで淡々と映し出していくこと。 前半の暴動を描いたシーンは特に顕著だが、早いショットの切り替えやハンドカメラで撮ったようなシーン、また時折挟まれる当時の写真。あくまで淡々と。本作が群像劇というのも相まって、その淡白さが当時のデトロイトの凄惨さを物語っているように思う。

そして中心となるモーテルでの一件。おもちゃの銃を冗談半分に撃ってしまったがためにモーテルは一瞬で囲まれ、人権も何もない恐怖の尋問タイムが続く。尋問で済むならまだましだ。殺人も起こる。ナイフを置いておくシーンなんかはよく映画では見かけるがやはり胸糞悪い。ただ、そこから脅しじゃないことを証明するかのように銃を発砲する辺りから只ならぬ緊迫感が流れる。暴動のガサ入れが上手い伏線となって、警察だって本当に殺しては立場がやばいことは承知している上での駆け引きとはわかっている。しかしそれでもあの暴力、怒号、差別、侮蔑、空気感など、まるでその場にいるかのような緊迫感を抱いたのは事実。メインとは言え、この力の入れ方には感服する。

群像劇ではあるが、何人かの中心人物がいて、その中でも印象的なのはまずデトロイト警察の嫌な奴を演じたウィル・ポールター。あの目、あのスカした表情がこの上なくムカつくのだが、それだけ役柄として演じきっている証拠。素晴らしい演技だった。 そして黒人側の人間ラリーを演じたアルジー・スミス。素晴らしい歌声があったからこそ、後半の変化というのは切なく思えてしまった。 また、黒人ながら白人との中間地点に立っていた警備員のジョン・ボイエガ。黒人であるわけだから例え相手の機嫌を伺ったところで差別は受けているはずなのにずっと表に出さずに隠し通し、事件後の尋問、そして法廷シーンで一番惹かれたのは彼のパートだった。

人種差別をテーマにした辛辣な作品だが、人種を問わず権力のある者が正しいとか立場によって守られるとかそういうのは違うと思うし、そもそも人種とかそういう次元を超えて、ミシガン州かどこかの警察が「人権とかが絡む問題は面倒」だと避けていくのが印象的で、例えどんな人種だろうとその人にとっての人権は守られるはずであって、その人権に対して抱く人それぞれの倫理観に訴えかける良作であることは間違いない。

キャスリン・ビグローの作品はもう一度見直してみたいと思った。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)サイモン64[*] 袋のうさぎ シーチキン[*]

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