原作未読。しかしながら、予告CMのテイストからして面白そうなミステリーの雰囲気を醸し出していたので鑑賞してきました。

主演は記者の妻夫木くんと育児虐待の罪で拘留された満島ひかり。共に演技派なので演技には期待できそうなところ、冒頭の面会室からの期待が高まると同時に、後々このシーンがあるが故に作品のレベルを下げることになると気づくことになる。

ある一家殺人事件を追う記者の田中は改めて事件を洗い出すために周りの人間に事情聴取から始まる。本作のメインはこの語りと回想シーンがメインであると共に犯人像は第三者の語りからしか見えてこない、というのが面白い所。 殺害される理由は？交友関係は？人柄は？犯人像の輪郭となるのは第三者の先入観を媒介した情報しかないのだ。だからどれもこれも事実だとしても疑わしく、犯人候補は数多いるように思わせる。

また、演出としても不安感を抱かせるようなシーンやカメラワークが多く、一家の殺害現場を映すゆっくりと舐めるような長回しや、拘留場でそっぽを向いて寝ているシーン。自分の手かと思ったらどんどん変化して増えてまとわりついてくる。不気味さこの上ない。

正直この辺りまではよかった。しかし、この期待値を満たすほどのオチはない。見せ方が悪くてパンチが弱い。 まず犯人を思わせるような共通の発言をした何気ない言葉選びは見事であったが、それとの直接的な関わりを見せるシーンがないこと。回想のどこかでそれがあったなら繋がって面白みが増したはず。加えて殺害理由ももしあの発見が理由だとしたら、あの手はそれを暗示させるものになるはずだから、そこが後々旦那の方と繋がっていたとかならよりストーリー性は増したはず。

そして蛇足かのような二人の関係。どうやら原作は二人の身内関係は明らかにされてないみたいで、正直本作のように冒頭で関係性を明かさなくても成り立ったはずだし、そうすればもっとオチにインパクトが出たはずのに非常に惜しい。脚本がもっと工夫されていたらよかった。