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[コメント] ディストラクション・ベイビーズ(2016/日)

ディストラクション(destruction)=気晴らし、娯楽=破壊
deenity

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とにかく殴り合い。殴って、殴って、血だらけになっても殴って、殴って、殴る。熱演するのは柳楽優弥。演技力のある俳優だとは思ってましたが、まさかここまでとは。特に会話もなくただただ殴るだけなのだが、あの顔を切り抜かれた時の表情。ゾワッとするようなあのヤバい奴の表情は見ているだけで狂気を感じた。 ヤバいのは顔の表情だけでなく、やはり殴り合いへの執着心にも表れており、冒頭のギタリストに殴りかかるシーンとか「どんだけしつけえんだよ」と思ってしまうほど。そこにこの作品のタイトルへの執着みたいなものも感じられた。

人は常軌を逸したような驚くべき事件やニュースに対して理由を求めたがる。この殺人動機は○○だ、とか、○○による恨みからの犯行、だとか。なるほど、それが理由でこうなったのか、という答えを求める。 しかし、本作で柳楽優弥が呟いた動機は 「楽しければいいけん」 理不尽すぎる。訳もわからず、いきなりボコボコにされて、まさに異常。でもそれによって、より一層狂人さが際立たされるのだ。

それによる影響も出てくる。感化されて協力し始めた菅田将暉の存在なんかはその象徴と言ってよい。終始カメラワークが見ている野次馬視点からの傍観した撮影方法をとっているのは世間一般を強調するため。 そんな中から時に影響を受けて、自分も大きいことをしたいだの何だの言って勝手なことをする菅田将暉の変化というのも面白い。完全にヘタレ野郎かと思いきや、一番何かを起こそうとしようするのはそんな奴だったりして。一種の現代への警句的作品でもあると思う。

「こんな調子に乗った奴、絶対そのうちボコボコにされるぞ」と思った。でも違う。完全にヤバ人の柳楽の前に、何かされた訳でもないのに自ら嫌になっていく。捕らえた女が一線越える行動を取った時、「どんな気分だった?」と初めて自分から嬉しそうに聞く柳楽の目。それほどヤバい奴なのだ。そうした末路があれなのだ。

SNSなしの生活は不可能だと言わんばかりの若者への普及率。掲示板やらツイッターやらに「やばい」「DQNだ」ごちゃごちゃ言って茶化す奴はそこら中にいるこのご時世に、「そんな首を突っ込んでるような奴はやっちゃうぞ」とでも言うかのような柳楽の存在感は最後まで輝いていた。

P.S.柳楽の役名は泰良というそうで、「タイラー・ダーデン」を思い出した人もいるんじゃないですか?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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