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[コメント] キル・ビル(2003/米=日)

突き抜けたバイオレンス・ファンタジーによるリアリズム批評の中に、強靭な芯が一本。深作も香港もアニメもマカロニも、全ては「情念」のために。なんか過激なギミック雑多にかき集めれば誰か喜んでくれるんじゃね?という浅薄さから程遠い、真摯な映画。求心力としての「情念」そのもの、ユマの澄んだ瞳に射抜かれる。こんなカッコいい映画だったのかと。
DSCH

**ネタバレ注意**
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合いの子があっ、との國村隼の罵倒を首もろとも刎ね飛ばすルーシー・リュー。ここはメタな点でも重要な箇所で、ああ、そういうことだったのかと腑に落ちた。映画的技法の出自はこの際問題ではなく、もとよりこれは博覧会やひけらかしの域で作っていない。そのシーン毎でマキシマムな効果のある技法を選び取っているだけ、ここには情念しかないのだと。それが分からぬなら死ね、と。今更ながら、ここまで徹底できる人っていないよな、と。「情念」の活写こそ映画である。

技巧的なところだと、オマージュへの要請に完璧に応えるロバート・リチャードソンの撮影も言わずもがなだが、やはり私の中ではサリー・メンケだ。「斬る」映画であればこそ、要(かなめ)は編集だと思う。青葉屋シークエンスの「斬れ味」の異様な正確さもそうだが、やはり白眉はオープニング、ビル発砲→ブライド被弾からのブラックアウトだ。これ以上長くても短くても成立しない。タランティーノ先生がしっかり遺志を継いでいるとはいえ、もっと彼女の映画を観たかった。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ゑぎ 3819695[*] けにろん[*] 週一本

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