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[コメント] トイ・ストーリー(1995/米)

嵐のように荒れ狂うアンディにもみくちゃにされてもなお、貼り付けたように笑みを崩さないウッディ。土台に足を貼り付けられても頓着しない「兵隊さんフィギュア」の「作戦行動」。冒頭から催涙フラグが乱立し、全アクションから情感がだだ漏れている。制約の中でそれに頓着せず力一杯飛翔すること。更に「棄てられるものたち」に寄せる想いの強さはティム・バートンに比肩する、泣き笑い映画の傑作。(初見)
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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最近の私の涙腺はかなりだらしないのだが、仮にそうでなかったとしても、もやもやと曖昧で温かい、マシュマロみたいな自らの記憶に誘うこの演出には勝てない。その記憶と遊ぶ喜び、もしくは一匙の罪悪感をともなう切なさ。

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それぞれのオモチャが、非力ながらもそれぞれの役割と献身に殉ずる。記号的と言われればそれまでかもしれないけど、記号であることの宿命を受け入れて躍動するというのは熱いものなのだなあと思う。制約の中で精一杯の「可能性」を追求すること。「オモチャを動かす」という演出と意図が不可分に結びついている。

さらに重要なのは、オモチャという制約を背負わせられながら「宿命」みたいな仰々しさや湿っぽさで構えているのでなく、「制約に頓着していない」ところだ。それなりに悩んだりはするが「諦観」ではない。周囲や、自分たちに嘘をついているわけでもない。ここが、最も私の涙腺を刺激するポイントだ。前述の兵隊さんのアクションもそうなのだけど、壊れて満身創痍のポテトヘッドが自分の目鼻を福笑いのようにもてあそんで「ピカソだ!どうだ!」というシーンも、ブラックでありながら明るいことに感動させられる。 これを際立たせるのが言うまでもなくバズのアイデンティティクライシスである。この配置がとても巧い。

そしてアイデンティティクライシスを乗り越えた上で放たれるバズの「カッコ付けて落ちてるだけさ」。泣くしかないと思うんだ。

何より「いっしょうけんめい」だ。私は「一生懸命」とか「頑張る」という言葉に懐疑的な人間なのだけど、これには負ける。これほど「いっしょうけんめい」なアクションは他ではなかなか観られないだろう。にも関わらず人間の巨大な視点からはよちよちしているというのが泣かせる。オモチャに目を付けたのは素晴らしく目が高い。

「必要とされたい」がために屈折するウッディのアクションもまた、その人間らしいみっともなさが「いっしょうけんめいさ」に結びつき、補強されている。

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アヴァンタイトルから異様に鮮やか。ベビーベッドの"JAIL"という張り紙(『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)、180度回転する首(『エクソシスト』)、ピンヘッド(『ヘルレイザー』)、"Whack the ALIEN"のチェストバスター(『エイリアン』)、シド宅の絨毯(『シャイニング』)など、映画的記憶に訴えかけるアダルトな小ネタもニクイね。(ホラー映画ばっかし!)。クレーンゲーム機のエイリアン人形がクレーンを指して「神だ」と宣うあたりのブラックなネタもいちいち面白い。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ナム太郎[*] 3819695[*] けにろん[*]

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