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[コメント] スター・ウォーズ 最後のジェダイ(2017/米)

「シン・帝国の逆襲」または「私は如何にして心配することをやめて暗黒面を愛するようになったか」。自殺するスターウォーズ。ディストラクティヴなコンセプトはさもありなんとするスタンスだが、演出が死んでいて、いい映画にはなっていないと思う。演出だけで評価するなら★2レベル。
DSCH

**ネタバレ注意**
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英雄と伝説は死ななければならない。エピソード4.5.6をリフレインしつつ、混沌の現代と繰り返す歴史、英雄にはままならない拡散の世界を踏まえて脱構築しようとする発展的リメイクの試みはエピソード7から貫かれており(いちいち言及しないが、帝国の逆襲とジェダイの復讐足して二で割ってアレンジした感じですよね)、ジェダイやシスから物語を解放して名もなき人に物語を還そうというコンセプトは『ローグワン』で予告されていたことだ。無常的、自殺的、破滅的な物語の間からフィン、ローズ、孤児のようなキャラクタが立ち上がることは全く期待通りで、暗黒面にどっぷり浸かった筋も好みなのだが、、、

演出まで破壊的にしてもいいものだろうか。設定や説明の端折りの度が過ぎている。センスのあまりよろしくないアップカットの切り返しの繰り返しがとてもつまらなくて、決まっているロングショットがほとんどない。意外なほど予算がない印象。位置関係が分からず没入出来ないという基本的な欠点が見過ごせない(異星にいる感覚って、このシリーズの生命線じゃないですか。ラストの血糊に塗れたような星は良かったですけどね)。それに、タメも何もなく自己犠牲的な死が羅列されても、物語にはならない。暗い物語は結構だが、ユーモア成分が冴えないのも辛い。レイとチューイのペアには期待したんだけど、そもそもほとんど描かれてすらいない。。これはハリソン・フォードが懐かしくなっちゃう時点でアウト。旨味が生まれる要素を素通りしちゃってるんだよね。

さらに、スターウォーズという興業フォーマットと、新シリーズの脱構築的コンセプトって、もともと相性としては悪い(旧作ファンには悲劇にならざるを得ない)。ここで前作は良いバランス感覚でこらえ切った感があったので高評価をつけたのだけど、風呂敷たたみの難しさに、もうこの時点で負けてしまったな、と思った(JJとローレンス・カスダンは逃亡しちゃったのだろうか?演出の投げやり感はこの辺に起因しているような気がする。) 混沌まで差し戻される物語なので、言ってみれば求心力が失われるのも当然で、でもそこをさらに踏み込んだ世界観と演出でカバー出来ないとやっぱり映画って面白くならないんだな、と。やっぱりコンセプトだけじゃいけないんだな、と。ミレニアムファルコンやチューバッカ、ルーク(ハミルさんブラボー)やレイアが出てこないと安心出来ないというのは、新たな映画的価値の創造に失敗しているんじゃなかろうか。せっかく前作で魅力を提示したデイジー・リドリーが「結局貧乏クジだったね」みたいなことにならないように、良い着地点を探していただきたいものである。

なお、ローラ・ダーンがファンとしては儲け役でうれしい。キャリー・フィッシャーとの絡みではグッと来た。ライトな観客にはどうでも良さそうなキャスティングではありますが。

(評価:★3)

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