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[コメント] リアル鬼ごっこ(2015/日)

制服、白いドレス、タンクトップ姿で蹂躙される「女性」。この取っ替え引っ替えはシチュエーション系のAVのそれであり、追尾・俯瞰・包囲するドローン撮影は、消費し搾取する野郎の視線そのものである。「スカートめくり」の幼児性が横行する「世界」は確かにシュールだ。性の寓話として底意地の悪い皮肉が貫かれ、嘘や照れのないマノエリ幼年期の儚いリリシズムと詠嘆は、ゲスの極みと対極に置かれて強度を増す。伏兵的傑作。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







(ペペロンチーノさんと同じく、以下性的な表現を含みます。ご注意ください)

こういった性的な対象とされた女性の受難という意味ではタランティーノの『デス・プルーフ』が思い出される。あちらには逆襲という選択肢があって、「カーチェイス」というアクションに仮託して、「女が男からバックから突かれる」が「女が男のカマを掘る」に逆転する構造だったのが、これはひたすら「風」(欲望)に「スカートをめくられ」、「バックから突かれる」構造だ。アクションの「ベクトル」が寓意と不即不離という意味でこの二作品は似ている。ただ、このカタルシスのない構造を選び取るところが確かに「鬼ごっこ」的であり、園的であるように思われる。園子温はタランティーノが好きらしいので、何らか参照していると思うのですが、どうでしょうか。

他に特筆すべきこととして、もともとシュールやギャグ方面に親和性の高い園子温の暴力描写が寓意から力を得ており、次に何が起こるかわからない緊張感がある。悪夢系映画としては水準が高めで、これは褒めすぎと思うが、終盤のネタバレがあるまでの主体の混乱が醸す怖ろしさはデヴィッド・リンチ的ですらある(褒めすぎである)。あるいは、これは園子温による『反撥』なのかもしれない。こういう青臭さは正直好きである。原作を参照している必要は全然ない。

脇役が大根なのが興を削ぐが、トリンドルさんは意外なほどよい。今後も使い方によっては化けるかも。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ロープブレーク[*] 煽尼采 けにろん[*]

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