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[コメント] ツィゴイネルワイゼン(1980/日)

女を軸に「右往左往」する男達。右へ左へ、奥へ手前へ。彷徨のうちにどっちを向いているのか分からなくなる。迷子にならずに腰を落ち着けたいなら、死ぬしかない。女を支配しているつもりが、支配され、逃避し続ける原田と、彼岸と此岸の境界で爪先立ちし、此岸に必死にしがみつく藤田。哀しく、恐ろしく、可笑しいエロスとタナトスの戯画。「肉の極みは骨ですよ」
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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男と男が並んでいるうちは此岸の話なのだが、男と女が一対一で並ぶと、途端に彼岸の風景になる。この対比の緊張が効果的で、右へ左へ移動するうちに女と閉じ込められるシーンは一様に恐ろしい。タナトスは安定の欲望でもあるようで、エロスが極まると死にたくなるという心象を戯画化したもののように思える。

改めて観ると、藤田の訥々とした台詞回しが、此岸に自分を繋留しようとする焦燥の裏返しのように聞こえ、彼岸と此岸の境界に爪先立ちのスリルがある。原田の酔狂はもちろんだが、こちらもおもしろい。原田が退場してからがつまらないように昔は感じたのだが、再見してみるといよいよ「さあどうするね」と原田の亡霊に喉元に刃物を突き付けられ骨を撫で回される感があり、とても怖い。行き当たりばったりのように見えてとても緻密な構成で、原田頼りにならないのがとてもいい。

あまりここでは取り沙汰されていないようで不思議なのだが、ここでの大谷の美しさはとんでもないと思う。そして、原田は僕が思う最高にカッコイイ俳優です(この風態で一人称が「ぼく」で、ですます調なのも妙に好き)。色んな魅力のある映画だけど、とにかく眼福、ってレベルでまとめてもいいくらい好き。何故か定期的に観たくなる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)ぽんしゅう[*] 寒山[*] けにろん[*]

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