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DSCHさんのコメント: 更新順

★3黒い家(1999/日)黒沢清並の意識的にとち狂った場所選定と、「正常」のバランスを崩した戯画的なフリークの狂騒によるブラックコメディ感、やたらと汗をぬぐう蓮司や怠く構えて足を引きずって歩く町田への生理的嫌悪感など、堂に入ったいやらしさが光る。しかしハッタリ感が放擲されて白ける演出も多々。うまくバランスを崩すのが肝の作劇であればこそ、ハッタリにも堅牢さが欲しい。大竹の底なし亜空間アイズは面目躍如。 [review][投票(2)]
★4ローズマリーの赤ちゃん(1968/米)「侵入」そして「つわり」の映画。現代都市を密室・聖域の集積の完成形と解釈するなら、この気色悪さはやはり都市に生きる我々だから感じるものだ。隔てる壁を超え、部屋という空間のみならず、五感、果ては胎内まで「侵入」する他者。そして他者の密室・聖域に取り込まれる。恐怖というよりも、嫌悪感。共同体によるレイプ。精緻過ぎるポランスキーの技に次第に吐き気を催してくる。ホラーというカテゴライズには若干疑問符。 [review][投票(5)]
★5ブレードランナー(1982/米)自分が誰であるか。「おもいで」と「愛」をかき集めるレプリの姿に決定的に心打たれる。「わたし」を根拠づける記憶や彼を記憶する者達が破壊される時、人は自分が誰であるかを見失う。まっさらな状態に差し戻された孤独な肉体を酸の驟雨に晒し、「生きている」という感覚を得るため刹那の戦いに臨むハウアーフォードの歴史的死闘。物語から深遠な光景を引き出すスコット演出も最高水準。 [review][投票(5)]
★4シューテム・アップ(2007/米)人参食って訳も分からずエンジン全開。お前は馬か!というツッコミをモノともしない暴走が苦にならないのは、ネタの展開が超速で温度が的確なだけでなく、全ての冗談を負って立つオーウェンの真顔が完璧にクールでセクシーだから。冗談はこうでなければならない。ラグビーボールよろしく赤ん坊を抱えて暴風のアスレチックを駆け抜けるマジ顔に痺れた。超スポーティ。 [review][投票(2)]
★4ブギーナイツ(1997/米)どんな姑息でクソッタレな人生でも、それと決めて始めてしまったら続けるしかない。一見華やかで脳天気なセックスとドラッグの饗宴はしかし、いずれ勃たなくなる男根が象徴する終わりや破綻への恐怖の裏返しのようだ。終わりを予感しながら「騒ぎ続ける夜」の、何という残酷さ。しかし、そんな人生達にも帰る家はある。というより、彼らは寄り添って家を「作る」だろう。優しい物語。 [review][投票(3)]
★4もののけ姫(1997/日)封じられた「飛翔(上昇)」。世界の業苦と憎悪全てを「タタリ(重み)」として背負う生命達が、ただ生きるため、つまりは「死に喰われない」ため、互いが互いをテロリストとしてしか認識しないリアリズムのアクション。世紀末的呪詛の大放出だが、私は支持する。これに震え上がることで見える意味もある。正直だと思う。いっそ氏にはタタリ神になっていただきたい。 [review][投票(4)]
★4クローンは故郷をめざす(2008/日)残念ながら私の頭では半分も理解出来ていないが、「母への回帰」や「代用品の拒否」に寄せる静謐な叙情の狂おしさは相当な水準であると思う。終盤に到り、私はほとんど胎児に戻ったような気分になっていた。水は羊水のイメージ。霧雨の草原の彷徨に胸掻きむしられ、弦楽による主題も心を打った。ついに50%の理解にも到らなかったにも関わらず・・・ [review][投票]
★4チェイサー(2008/韓国)テーマからしてポン・ジュノを仰いでいるのは明らかだが、本家に二、三歩及ばず、欠落の穴埋めを既製品のトレースや虚仮おどしに逃げた感も一部否めない。しかし、暴力の様態を極力「打撃」に徹底して「無常と怒り」を文字通り叩きつける演出は明快で正確。暴力のグロテスクなユーモア感も時に本家を凌ぐ。「接近戦」の映画。 [review][投票(5)]
★3キャタピラー(2010/日)若松孝二初見。ヘタレの私は、まず「若松プロ」のシンボルで腰が抜けた。第一義的に真面目だ。虚構への依存と瓦解、逆転現象の経緯を夫婦関係に投影する描写はそつなく、虚構を探し続ける戦後日本メンタリティの根源を曝す皮肉とも受け取ったが、その真面目さ故にねじこまれた「反戦」への傾斜が作品の均衡を崩す。仮にも乱歩を下敷きにするなら、ガチな反戦はよそでやって、嘲笑と冷笑に満ちた矮小な光景を見せて欲しい。[投票(1)]
★4ぼくのエリ 200歳の少女(2008/スウェーデン)およそ説明のつかない、あらゆる意味付けや価値観・倫理感を超越して他者の理解を寄せ付けない排他的な「理解」こそ「愛」と呼びうる局面があるのであって、その観察の的確な実践と言える。字義通りの空腹のみならず、殺意、孤独、あらゆる「飢え」が表出する。それを「みたす」ことへの二律背反する感情。作品内で展開される「行為」の全てが深く、見応えがある。 [review][投票(5)]
★5CURE/キュア(1997/日)「あんた、誰・・・?」という問いが、人が人であるための鎧「定義づけ」の装甲を一瞬で蝕み破壊する。暗示は世界に氾濫し、満ちたそれはすでに暗示ではない。自明・当然とされたものに理由や倫理の付け入る隙などあろうはずもなく、空虚な充実を形作る殺人と終末の拡散に響くピアノの旋律が、禍々しくも甘やか。憎悪は、ついに憎悪ですらなくなる。この上なく危険で邪悪な作品。 [review][投票(4)]
★4月に囚われた男(2009/英)システムにとっては重なりあってはならなかった時間と時間が真実を導き出す。ボタンの掛け違いがもたらす破綻のサスペンスが繊細でこなれている。 ネタがバレてからの情感が本番という姿勢も好感度大で、悠久の残忍とヒューマンな落としどころに手塚的快感・・・というか快感以前にじんと来る。いい映画。 [review][投票(4)]
★3恐怖(2009/日)「見る」という行為は不確かさを孕む、というより、視覚を取り巻く環境や認識・願望の作為が多分に作用している、一歩進んで、第三者による「捏造」かも しれない、あるいは捏造ですらなくそもそも・・・?という電波的な観察を起点にした作劇。それらは「確かに見える」とはどういう状況なのかというテーマを突き詰めた結果、今見えると思い込んでいる世界をぼろぼろに破壊する視覚体験である、といえば格好はいいけど・・・ [review][投票]
★2俺たちフィギュアスケーター(2007/米)揶揄が一部の本質を突いていることは認めるが、結局魅せられている側への作劇上の歩み寄りがないので、視野の狭い空騒ぎにとどまる。揶揄で溜飲を下げるだけではやはり貧しい。バカっぽいけどほんとはすげえスポーツなんじゃねえの、という変容の奇跡的瞬間もついに訪れない。そんな意図も「恥じらい」も露程もないから『Shall we ダンス?』的風景にするつもりがないのは承知だが、それにしても、である。 [review][投票]
★5乱(1985/日)幻想的なまでに凄惨。凄惨なまでに幻想的。漆黒の鎧兜の餓鬼と餓鬼が喰らい合い、硝煙と、残忍な程鮮やかに閃く旗印、炎と血の海を蒼白の幽鬼がさまよう時、綺麗事を嘲笑うように無常と惨は美を現出してしまう。そして「関係性」の死屍累々。人は何故悲劇を求め、観るのか。黒澤、渾身の回答。死すべき古典は、今なお永らえている。だからこその傑作である。 [review][投票(1)]
★3鉄コン筋クリート(2006/日)「都市を跳ぶ(飛ぶ)」というモチーフの昇華は黒田硫黄の『大日本天狗党絵詞』における飛翔に遠く及ばないと思われ、「生の重力」に絡めて言うなら『空気人形』との比較においても負けてしまう。「跳ぶ」という能力を登場人物に付与するとき、「跳べなくなる」、もしくはその意思によって「跳ばなくなる」という画、その理由付けにドラマが生まれるのではと思うが、何というか、そういった一押しが足りないと思う。 [review][投票]
★2THE 有頂天ホテル(2005/日)観せる者と観る者相互の「共犯」。私はこれには与したくない。観る者の予想を遙かに上回り圧倒しようという迫力と良い意味での悪意が感じられない(悪意がないのが三谷さんですから要するに好みなのですが)。約された大団円へ向かう馴れ合い芝居に刺激のかけらもない・・・と思いきや、ただ一点、付き人(梶原善)の神速平手打ちに気概を感じた。本作に足りなかったのは、この「真摯な裏切り」であると思う。 [review][投票(3)]
★4遊星からの物体X(1982/米)笑っちゃう画が確かにあるが、真の絶望は冗談を引き連れて現れる、という視座から観ると完全に妥当だ。しかも様々な表情の死が大挙して観る者を襲う。餓死、凍死、焼死、肉を切り裂かれ貫かれる痛みへの恐怖。しかしそれらを遥かに凌駕する「私が私であるという確証がどこにもなくなる」という「個・我」の死という恐怖を生者に強いる映画だ。 [review][投票(3)]
★3インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(1984/米)「無邪気で元気な偏見」ほど危険なものはないと確信する私にとって、ギョギョギョと目を剥くシーン満載。本気なわけないと思うが、これをシャレとして許せるほど私の肝は据わっていない。ただ一点素ん晴らしいと主張したいのは、フォードの走り姿である。決定的に映画的だ。遅くて、重くて、無様である。しかし、「映画的に極めて正しい速度」と思う。「そこかよ」というか「そこ、どこよ」みたいな話なのかもしれないが。 [review][投票(2)]
★3ブルース・ブラザース(1980/米)心情的には否定したくないが、ゲストに甘えた演出の弛緩が致命的。より危険に面白くなるはずが「コント集」に留まり、高揚に乏しい。コーエンが撮ったとしたらどれだけ面白くなったか、などと余計なことまで考えてしまうが、「神の加護」を後ろ盾(言い訳)にした漫画チックで明るい破壊は見逃せない。本気で逃げ惑うエキストラの画なども嬉しい。でも、やっぱり野暮を承知で、怠い。 [review][投票(2)]